電気

電力事情

電気料金改定のからくり  燃料費調整制度の問題点

2009/01/01 更新

 2008年9月、中部電力と北陸電力を除いた電力会社8社が約2年ぶりに料金改定を行った。
 なぜ電力会社はこのタイミングで一斉に料金改定を行ったのか。
 その根底には「燃料費調整制度」のからくりがあるのではないかと考えられる。


 燃料費調整制度とは、輸入燃料価格の変動に応じて3カ月ごとに電気料金を自動的に調整する制度。電気事業者の経営効率化の成果を明確にし、経済情勢の変化をできる限り迅速に料金に反映させると同時に、電気事業者の経営環境の安定を図るために1996年に導入された。
 ここでいう輸入燃料価格とは、通関統計における原油、LNG、石炭の価格であり、電力会社の実際の燃料調達価格とはまったく関係がないという。


 燃料費調整制度導入時の検討項目と結論によると「電気事業者の燃料調達に係る経営努力の維持のため、実際に購入する価格ではなく、円建て通関統計価格を採用することにより、電気事業者が平均以上の燃料調達に係る経営努力を行う直接的なインセンティブとなるほか、電気事業者の価格交渉力の維持が期待できる」とされている。


 燃料費の高騰は、あらゆる産業にとって大きな問題であり、それぞれがコスト削減に最大限努めてなお吸収できない部分を、やむなく価格に転嫁している状況の中で(報道されたイカ釣り漁船のように価格に転嫁できないケースもままあるだろう)、電力会社にこのような特権が与えられていることは、問題ではないか。
 また逆に、電力会社が緊急的に燃料を調達しなければならない状況が発生し、その価格が通関統計価格を上回っていたとしても、電力会社はそれを料金に反映できないという事態も考えられ、エネルギーセキュリティの観点からみても問題がある仕組みではないか。


 特に電力自由化が進む状況下、全電力会社が同じ価格指標で燃料コストを料金に算入するという仕組みは見直されるべき時期に来ていると思われる(現在、料金制度小委員会において議論が継続中)。 燃料費調整制度によって電力会社が自動的に調整できる単価には一定の上限が設定されており、この上限値(基準燃料価格から50%程度)を超える燃料費の高騰が継続する場合には、必要に応じ料金改定を行うことが適当とされている。 2008年の燃料費の高騰により、この上限を上回る事態が発生した。よって電力会社は料金改定を実施せざるをえない状況となった。電力会社が燃料費の高騰分を反映させて電気料金を改定するとなれば、通常料金が上がると考えられるだろう。しかし、実際には電気料金は据え置き、もしくは値下げとなっている。


 これは、電力会社が燃料費以外のコスト削減の成果を電気料金に反映させたためとされている。事実、電気料金に占める燃料費の割合は96年には13%であったのが、現在では31%にまでなっている。
 現行制度下において、電力会社は電気料金を値下げする場合、経済産業省に届出を行えばよい。しかし、値上げの場合には同省の認可を得なければならない。つまり、電力会社が単純に燃料費の高騰を理由に料金値上げすることにした場合、経済産業省の認可を得なければならない。深読みすれば、電力会社はこれを避けるために電気料金を上げないという方向で料金を改定したとも考えられる。


 物価が高騰する中にあって電気料金が値下がりすることは消費者にとって喜ばしいことである。しかしながら、電力会社はこの料金改定を行う際に、基準平均燃料価格を引き上げていることに注目しなければならない。 例えば、東京電力の基準平均燃料価格は06年4月の改定時に2万7400円/キロリットル(原油)であったが、08年九月の改定以降は4万2700円/キロリットル(原油)と五五%以上も上昇した。つまり、電力会社はこれまでに比べて、はるかに広い幅で燃料費調整を行うことが可能になったということであり、この仕組みにより燃料費の高騰分が09年1月以降電気料金に加算されることになる。これが、09年1月に電気料金が値上がりするといわれている原因だ。


 経済産業省は、この燃料費調整制度に基づく1月の電気料金実質値上げについて、電力会社に対し値上げ幅を圧縮するように求めてきた。
 その結果、非自由化部門である低圧・電灯ユーザーに対しての値上げ幅は、とりあえず半分に抑えられるが、実際には残りの半分はその後一定期間をかけて回収される。自由化部門である特別高圧、高圧需要家については1月から全額加算される見通し。その後は、原油価格の下落と円高の影響を反映して料金が下がる見通しであるが、将来的に燃料費がどのように変動するか不透明な状況下、今回のような方法で電気料金の変動範囲が広くなることについて不安を感じずにいられない。
 政府与党がやっとの思いでつくった定額給付金制度。09年1月に電気料金が値上がりをし、その状態が1年間続けば、この2兆円がすべて吸収されてしまうという試算もあるようだ。

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