現在、環境問題に関するさまざまな書籍が出版されていますが、その種類の多さに迷わされてる方もいるのではないでしょうか。環境市場新聞編集部が厳選した本を紹介していきますので、気になった本があればぜひ手に取ってみてください。環境問題について一緒に考えていきましょう。
藤井一至 著

大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち

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地球の特産物「土」はこんなにも面白い
 辞書では、土壌つまり「土」を「岩石の風化物に生物の遺体やその分解物などの有機物が混じって」できたものとしている。土の成り立ちには生物(植物)が必須だったのだ。厳密な意味での土は、生物のいる地球にしか存在しない。
 岩石のような無機物と有機物がどのように混ざり合い地球の特産物「土」をつくり出したのか。生成された土から、植物、動物、そしてヒトはどのように生きる糧を得てきたのか。その結果、土はどう変貌してきたのか。そうした土と生き物の長い歴史を、折々にユーモアを交えながら解き明かしていく。
 著者は土壌学、生態学が専門の研究者。面白そうな土と生物を求めて熱帯雨林の森から永久凍土のある極地まで世界中をスコップ片手に飛び回るという。蚊の大群に遭遇し、身体中を刺されながら3.5億年前の地層から樹木の化石を発見する。そんなエピソードも披露している。
 土壌と生物の変遷に関連してエネルギー問題や地球温暖化など環境問題にも言及し、解決の糸口も示す。「過酷な大地を生き抜いてきた生き物たち、問題土壌を克服してきた先人たちの知恵は、土とうまく付き合う未来を照らしている」(220〜221頁)。

大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち

山と溪谷社 900円+税
ふじい かずみち
1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了、現在は森林総合研究所研究員。専門は土壌学・生態学。国内各地、インドネシア・タイの熱帯林からカナダ永久凍土まで、おもしろい土と生き物を求めて、スコップ片手に飛び回っている。第一回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)受賞。第三十三回日本土壌肥料学会奨励賞受賞。