「豊かな生活と環境」への期待の高まりを背景に日本らしさ・地域らしさを推進する運動が活況を呈しています。「環境知識」では気候変動・生物多様性の話から注目の政策、地産地消運動まで幅広く取り上げ、そのポイントをわかりやすい解説も交えてお届けします。

天然ガス
世界市場の動向と次世代エネルギーの可能性

 国際エネルギー機関(IEA)は、アメリカが2015年に天然ガス産出量でロシアを抜き、2017年には石油産出量でサウジアラビアを抜いて世界最大の石油・ガス資源産出国になるというシナリオを示した。その根拠は掘削技術の革新により困難とされていた地中深くの頁岩(シェール)層に眠る石油・ガス資源の商業生産が可能になったこと。いわゆるシェール革命の影響である。
 アメリカに販売を予定していた中東やアフリカ産の天然ガスは欧州へ流れ、欧州でのロシア産ガス市場は縮小。ロシアは日本を含むアジア市場へ目を向ける。カナダなど新たな資源国も台頭。シェール革命は世界の市場構造を一変させた。
 そもそも天然ガスは海の動植物プランクトンが泥と混じり海底に推積、これら有機物が圧力と地熱の影響を受け徐々に変化したものといわれる。石油と異なり世界各地に供給源があり、産出国で気体の天然ガスを冷却し液化して輸送する。これがLNGの略称で呼ばれる液化天然ガスだ。
 日本では1969年にアメリカ(アラスカ)からの輸入を開始。2013年にはオーストラリア、カタール、マレーシアなどから8749万㌧を輸入した。国内でも新潟、千葉、北海道、秋田などに59の鉱山が存在し、2011年度には国内総供給量の3.1%(266万㌧)を産出した。
 また日本の周辺海域には天然ガス年間使用量の約100年分とも試算されるメタンハイドレートの埋蔵が確認されている。これは「燃える水」ともいわれる氷状固体物質で、体積の170倍ものガスを含有し、次世代エネルギー資源として期待されている。
 天然ガスは、電気、蒸気、冷温水、直接燃焼などさまざまな形で利用でき、発電所の燃料としては他の化石燃料と同様、需要に応じた運転量の調整が可能だ。環境に左右される再生可能エネルギーを補う安定したエネルギー源として今後の需要増も見込まれている。
 とはいえ、天然ガスも限りある化石燃料。無駄のない多様な供給システムの確立や、地球環境にも配慮した世界規模での安定した市場構築が必要である。