コーヒーは自然から授かった恵み
1933年の創業以来、日本のコーヒー文化を創出し、市場を牽引してきたUCC上島珈琲 株式会社。上質のコーヒーを提供するため、農園での苗木の育成から、原料輸入、研究開発、焙煎加工・包装、製品販売、品質保証、文化の創出に至るまで、「カップから農園まで」の一貫したコーヒー事業を構築してきた。
事業活動の礎となるコーヒーは、健全なコーヒーベルト(コーヒー栽培が可能な地方)の環境が与えてくれた自然の恵み。そう考える同社は、多様な生物が共存する豊かな地球環境で育った、安全・安心でおいしいコーヒーの提供を使命としている。主力の「六甲アイランド工場」は、1999年2月に日本のレギュラーコーヒー工場で初めて、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を認証取得。新しいことにチャレンジし、試行錯誤を重ねながら得たものは、今後の成長につながるという理念がある。
収穫・精製されただけの生豆は、まだコーヒーとしての味や香ばしさはない。生豆を熱風で炒って焙煎することで、成分が化学変化し、あの香りが放たれる。苦味、酸味、甘味といったコーヒー独特の風味もこのとき生まれる。
おいしさを決めるのは焙煎中の豆の温度変化の調整。そのため熱風の温度管理が重要になる。UCCは長年一筋に追求してきた"理想のコーヒー"を実現するため、きめ細かな熱風管理システムと既存にはない「スチーム+熱風」という新しい焙煎技術の研究開発に取り組んだ。と同時に焙煎時の廃熱にも着目した。
焙煎時の廃熱には強い香りがともなうため、大気中に放出するには、さらに数百度のバーナーで熱し脱臭する必要がある。新型焙煎機ではこの廃熱を再利用しようと考えた。だが「スチーム+熱風」という業界初の焙煎技術と廃熱の再利用は、前例のない試みだ。開発は難航。小型機をつくり何度も試作を重ね、2年半以上の歳月をかけ、ようやく完成にこぎ着けた。
廃熱利用で75%減の省エネ
独自の焙煎技術を結集した「アロマスター」は、六甲アイランド工場で2015年2月から本格稼働を開始。熱風の温度変化を監視し、豆の温度を自動的にコントロールできるようになり、「スチーム+熱風」の活用で、豆の芯までムラなくふっくらと焙煎され、雑味をおさえたクリアな味覚が生み出されている。
焙煎時の廃熱再利用も順調だ。エネルギーのトータル使用量は一般的なドラム式の熱風焙煎機(同様の機能を付加した場合)に比べ約75%削減。環境対策に大きく貢献している。
UCCの工場では、どんなに小さなことでも改善案を定期的に1人1件挙げる制度がある。今後もコーヒーのおいしさを最大限に引き出すため、現場ではまた新たな課題を見つけ、たゆまぬ改善が続けられている。
これまでなかった「スチーム+熱風」の焙煎技術を実現した「アロマスター」。
UCC上島珈琲 株式会社(http://www.ucc.co.jp/)