CO2 大都市で高濃度
2014年12月、環境省、国立環境研究所(NIES)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」から得られたデータの解析結果を発表した。これによると、大気中にある二酸化炭素(CO2)の濃度は、世界の大都市において、その周辺よりも高くなっていることがわかった。
今回の解析に使った「いぶき」は、環境省、NIES、JAXAが共同で開発した世界初の温室効果ガス観測専用衛星。CO2とメタンの濃度を、宇宙から観測している。主な目的は温室効果ガスの吸収・排出量の推定や予測の精度を高めること。2009年1月に打ち上げられ、現在も観測を続けている。
発表された解析結果のもとになるデータは2009年6月から2012年12月までの3年半で取得したもの。「いぶき」から得るCO2濃度の情報は、化石燃料の消費など人間の活動が原因で排出されたものだけではなく、生物の呼吸、海洋が行う吸収と排出、植物の光合成による吸収、森林火災による排出なども含まれる。そこで排出インベントリと呼ばれる化石燃料消費から算出したCO2排出データを利用して、人間が排出したCO2濃度も導き出している。それによると、人為起源CO2濃度が特に高かったのは、アメリカのロサンゼルスや中国の天津など。高濃度の領域は人口の密集地や、火力発電などを含んだ産業活動の盛んな地域とみられる。
今回の解析により、衛星による観測が、温室効果ガス排出の監視ツールとして役立てられる可能性もみえてきた。