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私の職場はサバンナです!~14歳の世渡り術シリーズ~|エコブックス

保護活動の課題もわかる読むサファリツアー

 「中学生以上、大人まで。」が読者対象の「14歳の世渡り術シリーズ」の1冊。著者は南アフリカ政府公認で唯一の日本人女性サファリガイド。サバンナの野生観察をナビゲートする専門家が、冒頭で現職に就いた経緯を紹介し、続く章で「読むサファリツアー」を展開する。動物の生態を、肉食、草食、鳥類、昆虫ごとに解説し、環境保護活動の現状や課題にも触れる。
 語り口は柔らかく楽しい。披露される豆知識も興味深い。ライオンの狩りの成功率は15〜25%なのに対しハイエナはおよそ75%。サファリで最もよく見かけるシカのような体つきのインパラはウシ科の草食動物で大きな群れで暮らし、12月頃一斉に出産するため「サバンナがインパラの赤ちゃんだらけになる」(84ページ)。ハゲワシの胃液は金属も溶かすほどの酸性で、腐りかけの死肉を食べても、細菌やウイルスなどほとんどの病原体を消化できる。
 そして保護活動が直面する難しい問題も率直に語る。生活の貧しさが導く密猟の増加。野生動物は、保護区の柵を破って隣接する村の家畜を襲い農作物を荒らす。そんな村に暮らす子どもの多くは、サファリツアー客が楽しんで見物するライオンやゾウを見たことがなく、保護対象という動物は夜にやってきて「自分たちの生活を苦しくさせる敵のような存在」(207ページ)と考えている。
 中学生はもちろん、読者対象の上限に示された「大人」に読んでほしい。



河出書房新社 1,562 円(税込)

太田ゆか 著
1995年生まれ。南アフリカ政府公認サファリガイド。立教大学在学中に、南アフリカのサファリガイド訓練学校に留学し、資格を取得。2016年からガイドとして活動し、野生動物の保護活動にも取り組んでいる。


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