• サステナブルノート
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大阪万博開催までまもなく!万博の歴史や環境との関係性について振り返る

2025年4月13日(日)から10月13日(月)までの半年間、「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)が開催されます。日本で大規模な万博が開催されるのは2005年の愛知万博以来20年ぶりです。161の国と地域、9の国際機関の出展が予定されており、来場者数見込みは約2,280万人。経済産業省が試算する経済効果は約2兆9000億円といわれ、経済へのプラスの影響が期待されるとあり官民をあげて盛り上げに向けた取り組みが進んでいます。今回のサステナブルノートでは、開催が間近に迫った万博の歴史と、環境との関係性についてご紹介します。


そもそも「万博」ってなに?


正式名称は「万国博覧会」で、「国際博覧会」とも呼ばれます。フランス・パリに本部を置く博覧会事務局(BIE)が定める国際博覧会条約に基づき、複数の国が参加して行われます。この条約には参加国数や開催期間、展示されるものなどが細かく規定されていますが、簡単に説明すると「世界中からたくさんの国が参加して最先端の技術を披露したり、文化交流が行われたりする一大イベント」です。過去の万博では、1853年のニューヨーク万博でエレベーター、1876年のフィラデルフィア万博では電話、そして1985年のつくば万博では携帯電話と、現代社会を彩るさまざまな技術が展示され、普及のきっかけとなりました。万博への出展がなければ広まるのにもっと時間がかかったかもしれないと考えると、万博がぐっと身近なものに感じられますね。

万博は、古代エジプトが領土拡大や外交で手に入れた各地の品物や技術をピラミッド建造の際に人々に公開したイベントにルーツがあるとといわれていますが、現在のようなかたちで万博が開催されたのは1851年のロンドン万博でした。ハイドパークに鉄骨とガラスで建てられた水晶宮(クリスタルパレス)をはじめ、産業革命まっただなかのイギリスの技術力を知らしめました。この時代にはすでに蒸気船と鉄道により海路・陸路の交通手段が発達しており、141日間の会期で国内外から約604万人もの来場者があったと記録されています。

2回目の万博は1867年にパリで開催。このとき初参加した日本は、江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれブースを出展しました。かの渋沢栄一も使節団の1人として参加しています。日本独特の技術や文化を海外に知らせるきっかけとなったとともに、近代化の礎にもなりました。総来場者数は約906万人。各国ブースのほか、飲食店や遊園地といった娯楽施設も併設され、大変な賑わいだったと伝えられています。このスタイルはその後の万博でも踏襲され、現代まで引き継がれています。
日本で初めて万博が開催されたのは1970年の大阪万博。芸術家・岡本太郎の「太陽の塔」で有名ですね。

なお、万博には「登録博覧会」と「認定博覧会」の2種類があり(1996年~)、「登録博」がより大規模な万博となります。

テーマ開催間隔開催期間開催規模
登録博覧会総合的なテーマを扱う5年に1度6週間以上6ヵ月以内制限なし
認定博覧会特定のテーマに絞る登録博覧会の間に1回3週間以上3ヵ月 以内25ha以内



万博と環境の関係性


万博が世界各国で開催されるようになって200年弱。その間に世界の情勢や環境、価値観は大きな変化を遂げてきました。各国で権力誇示や企業の利益のために万博が濫立するようになると、国際的に見直しの動きがとられ、1912年に国際博覧会条約が成立、1928年にBIEが設立されます。万博の役割、目的といった思想的な部分や、開催間隔や規模などの実務的な部分が秩序立てられ、現代の万博として整備されました。この時から万博は毎回「テーマ」が設けられるように。各国が自由に展示していたそれまでと異なり、「進歩の世紀」(1933年・シカゴ)、「人類の進歩と調和」(1970年・大阪)といったテーマに沿った展示が行われるようになり、出展者や参加者に共感がうまれやすくなりました。

 環境に関するテーマが打ち出されたのは、1974年・スポーケン(アメリカ)の「汚染なき進歩」が最初です。世界的に環境問題への関心が高まっていた時期に、工場排水やゴミなどによる公害が進んでいた都市で開催されました。会期中の世界環境デー(6月5日)に環境シンポジウムが開かれるなど、課題解決に向けた機運を高める効果があったようです。会期後、会場跡地は公園として活用されました。

その後、1975年・沖縄や1998年・リスボン(スペイン)で「海」、1984年・ニューオーリンズ(アメリカ)で「河」、2000年・ハノーバー(ドイツ)や2005年・愛知で「自然」がそれぞれテーマとなるなど、環境をテーマとする万博が多く開催されました。社会が発展し、技術が進歩していく反面、切っても切れないのは環境問題。地球規模での解決が求められる議題だからこそ、万博の場は出展者と参加者が一緒に考えることができる、有効かつ貴重な機会ですね。

なお、今年の大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。サブテーマは「いのちを救う」、「いのちに力を与える」、そして「いのちをつなぐ」。環境も含め、社会全体の持続可能な発展をめざすものとなっています。また、日本館のテーマは「循環」。ごみ⇒水⇒素材⇒ものへと資源を循環させるエコな技術が体験できそうです。


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電気を学ぶ
屋井先蔵|1933年・シカゴ万博に地震計を出展
https://econews.jp/learn/learn_denki/1574/



万博会場の自然環境について


万博の開催テーマで環境を論じる一方、広大な会場設営を必要とするため環境問題も引き起こす場合があります。1975年の沖縄万博では「海-その望ましい未来」がテーマとして設定されたものの、開発にともなう工事で海に泥が流れ込み、サンゴ礁に被害が及ぶなどの海洋汚染問題が発生しました。以後の万博では会場設営に際する環境への配慮が課題となりました。

さて、今回の大阪万博の会場は「夢洲」という人工島です。大阪市内で発生した建設土砂によって造成されました。利活用について、さまざまな案が検討されては頓挫してしまったため「負の遺産」と呼ばれたこともありますが、大阪万博の会場に決定したことで開発が進みました。なお、造成から約40年が経った今、夢洲には「野鳥の楽園」と呼ばれるほどの生態系が形成されています。明治以前は広大な干潟だった大阪湾は都市開発により埋め立てられ、そのほとんどが失われました。夢洲の造成も都市開発によるものでしたが、現在では人工の湿地にその姿を変えており、コアジサシやツクシガモをはじめとする絶滅危惧種に指定されている渡り鳥が飛来・繁殖。多くの種類の昆虫や植物も生息が確認されています。万博の環境影響評価資料では鳥類や植物への配慮について触れられていますが、会期終了後の跡地はエンターテインメントエリアとしての開発が検討されているようです。SDGs達成のためのプラットフォームとしても位置付けられている大阪万博。偶発的とはいえせっかく再生しつつある自然環境が確認されている以上、万博のサブテーマのひとつ「いのちをつなぐ」のもと、万博開催を含む開発による影響が少しでも小さく留められることを願うばかりです。

ちなみに、大阪万博の前は2020年・ドバイ(アラブ首長国連邦)で開催され、次は2030年・リヤド(サウジアラビア)での開催が決定しています。中東諸国での開催に挟まれるかたちとなりましたが、日本ならではのおもてなしの精神など、オリジナリティーに期待したいですね。なかなか訪問が難しい国や地域の文化に触れられる機会でもありますので、足を運んでみてはいかがでしょうか。もしかすると、バードウォッチングも楽しめるかもしれませんよ。

関連コラム

サステナブルノート
世界湿地の日(2月2日)に考える、身近な湿地と環境保全
https://econews.jp/column/sustainable/10750/



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大阪府で環境に配慮して省エネしている企業はコチラ! 【第35回】株式会社功洋美術



参考サイト:
●EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト「持続可能性に関する取り組み」
https://www.expo2025.or.jp/overview/sustainability/
●EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト「環境影響評価」
https://www.expo2025.or.jp/association/maintenance/environmental_impact_assessment/
●WWFジャパン「万博予定地の環境保全を求める要望書を提出」 
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4967.html



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