持続可能なまちづくりのために―1,800万人超の「関係人口」が地方創生のカギ!

日本では地方都市の人口減少や高齢化により、地域づくりの担い手不足が深刻化しています。近年、リモートワークが普及するなかで地方移住に力を入れる自治体も増え、国も都市部への一極集中を緩和するために移住支援を強化してきました。しかし都会への人口流入は続いており、政策としての地方移住が順調に進んでいるとはいえません。
そこで、2018年ごろから、地方の活性化に期待がもてる「関係人口」を増やすという取り組みが始まりました。今回はこの「関係人口」という言葉について解説するとともに、実際に取り組む例を紹介します。
関係人口の定義

「関係人口」は、先に述べたように地方創生に関連する言葉です。総務省の「二地域居住・関係人口ポータルサイト」では、「関係人口」を「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域と多様にかかわる人々を指す言葉」と定義しています。地域外に拠点を持ちながらも、地域の人や経済、文化と継続的にかかわるいわば「第3の人口」という新たな概念です。若者を中心に地域外の人材を呼び込み、地方に新しい風をもたらす存在として注目されています。
わかりやすくいうと、たとえば「生活基盤は東京都にあるけれど、〇〇村に魅力を感じたから定期的に通い、住民たちと地域づくりを行っている」、「ふるさと納税を活用して支援している」などが当てはまります。地域の発展に貢献できるのは、必ずしもその地域に居住している人ばかりではありません。地方の人口減少や高齢化の課題に対して、新しい視点で住みやすい環境づくり・活性化ができる存在が必要です。インターネットをはじめとしたデジタルの発展により、リモートワークで都心と地方を行き来しながら働いたり、経済的な成功ばかりでなく健康的な生活を志向する人が増えたりなど、新しいライフスタイルがこの動きを後押ししています。
関係人口には大きく分けて3つの区分があります。
①何らかのかかわりがある者=「過去の勤務や居住、滞在等」
②居住地と地域を行き来する者=通称「風の人」
③地域内にルーツがある者=「近居・遠居」

※引用元:「地域への新しい入り口 二地域居住・関係人口ポータルサイト」(イメージ図)
なかには地域とのかかわりを持つうちに移住する人もいます。こうして地方の人口減少や高齢化の課題に対して、関係人口が新しい視点で地域の魅力を再発見する役割を担うことが期待されています。
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関係人口の現状

国土交通省の2021年の資料(※)によると、18歳以上の全国の居住者、約1億615万人のうち、なんらかの形で他地域とかかわりをもつ関係人口は1,827万人と約17%にのぼります。その内訳は、首都圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏の居住者の18.4%(約861万人)、その他の地域居住者の16.3%(約966万人)となります。また関係人口の来訪が多い地域は、三大都市圏からの移住も多い地域であることが明らかとなっています。関係人口が多い地域は、外部からの人々を受け入れやすい環境が整っているといえるでしょう。
(※)国土交通省:全国の「関係人口」は1,800万人超!~「地域との関わりについてのアンケート」調査結果の公表〜
関係人口増加のメリットおよび成功事例

■メリット
①移住者の増加が期待できる
地域を気に入って移住するケースのほか、関係人口の人々がSNSを活用して、地域の様子や魅力を発信したことにより知名度が上がり、「移住したい」と思う人が増える可能性もあります。
②経済活動の活性化
応援したい地域を行き来し、地域づくりに参加するため、その度に宿泊費や食事代、娯楽費などが発生することが考えられます。また、「ふるさと納税」という形で地域を応援することも可能です。「関係人口=応援してくれる人」が増えるほど、地域経済が潤い、活性化します。
③新しい技術や考え方を得られる
関係人口は、全国各地に暮らす人々によって構成されているため、地域住民にはない考え方や新しい技術が取り込まれることも期待できます。
④関係人口創出・拡大のための補助金を受け取れる
日本政府は令和3年度より、関係人口の創出や拡大を進める地方公共団体に、さまざまな地方財政措置を行っています。民間団体や地域協議会などは事業ごとに補助金を受け取れます。その一方で「関係人口の増加」が最終目標になってしまい、地方創生につながらない、また受け入れ側の体制が不十分であることなどで住民とのトラブルになるケースもあるようです。受け入れる側・訪れる側の地域への配慮も必要となってきます。
■成功事例
①関係人口の創出・拡大のため、官民一体となった取り組み
北海道の上士幌(かみしほろ)町は、ふるさと納税の開始当初から制度を利用し、子育て支援策を強化することで人口の減少を食い止め、増加に転じさせました。
また、クラウドファンディング型のふるさと納税を募り、その寄付者に対して、首都圏で開催する交流イベントに招待し、上士幌への移住体験モニターを募集するなどの取り組みをしています。
②関係人口のサブスクリプション
日本各地で運営する家に定額で住めるサービス。各物件には地域住人が管理者として担当に付き、地域との交流の機会やユニークなローカル体験、その地に暮らしているからこそわかる情報を提供してくれます。好きな時に好きな場所で暮らしたい、都市と地方の複数の拠点で生活をしてみたい、リモートワークをしながら各地の自然とふれあいたい、その土地で暮らす人たちと出会い交流したい、といった新しい暮らしのかたちが実現できます。
関係人口とSDGs

こうした関係人口の取り組みはSDGsにもかかわります。目標11は、都市や人間の居住地を誰もが安全に、持続可能なものにするための目標です。大きくは災害リスク管理や森林整備、輸送システムなどのターゲットを設定していますが、さまざまな地域活動を通じた社会課題に向き合う関係人口の取り組みもまた、持続可能なまちづくりに貢献しています。
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今さら聞けないSDGsの基本――9月はSDGs週間
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【参考資料】
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/11-cities/
おわりに

地方創生の一歩は興味がもてる地域を見つけること。観光先で住民と交流できるイベントに参加する、あるいはふるさと納税で応援する町を見つけること、地方の特産品を進んで買う、といったこともきっかけになり得ます。すでにこれらのうち1つでも行っているあなたもまた、関係人口のひとりなのです。
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