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日本テクノが考える「省エネ活動」、「電気設備の安全・安心」、「電力小売」など切り口にした解説や、「環境」に対する思い、「お客様」との協業などを紹介。

サステナブル社会とは
sustainable:「持続可能な」の意味。環境保護と自然開発を共存させ、
持続可能な経済成長を目指す社会のこと。

第8回
変速振動なし、低騒音、低環境負荷──
電動バス開発

アンダーバー
松田 裕之 紙屋 雄史(かみや ゆうし)
早稲田大学助手、運輸省交通安全公害研究所研究員などを経て2006年より早稲田大学にて教鞭をとる。2008年から電動車両研究所所長。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。

 サステナブル(持続可能)な社会の姿を学術研究の最先端から探る本コーナー。今回は、早稲田大学電動車両研究所の所長で、早稲田大学理工学術院の紙屋雄史教授に、車両メーカーとは異なる切り口で進める車両の電動化について話を聞いた。


メーカーにできない開発を

 日本でエコカー開発の主流を担うのは大手自動車メーカーだが、学術分野から電動自動車の研究開発へ果敢に挑戦するのが、紙屋雄史所長率いる早稲田大学の電動車両研究所だ。11名の研究員は電動タイプ、プラグインハイブリッドタイプ、燃料電池タイプの3分野を研究しており、これまで主に人と地球に優しい〝電気バス〞について研究を重ねてきた。「バスを電動にすると、変速ショックがなく、低騒音で、環境負荷の低い優れた公共交通手段になります。ただ、バスは一般乗用車と違い生産台数が少ないため、メーカーは研究開発にあまり力を入れていません。実用化に向け、課題を探ってきました」と紙屋教授は言う。
 一般的な路線バスは1年の走行距離が約5万kmと多いため、乗用車よりも耐久性の高い部品が求められる。発進と停止の繰り返しが多く、大きな重量があるバスは、動力に大型バッテリーも必要だ。そうした課題を1つずつ解決しながら実用化を進めてきた。「部品の耐久性が一般のバスとほぼ同等になるよう市販のバスをベースに改造メーカーの協力のもと試作を行い、車検を取得しています。またバッテリーは、路線バスの営業距離を1往復以上できる程度にリチウムイオンバッテリーを小型化し、その分充電回数を増やすことにしました」。
 バス運転手の充電作業の軽減にも配慮した。充電装置には、現在携帯電話などで利用されている非接触型のワイヤレス充電システムを当初から採用している。駐車スペースに設置された充電パッドの上にバスを停めると自動で充電が始まる。
 「こうした技術を搭載したのが、WASEDAELECTRIC BUS(WEB)です。第4世代まで開発する中でブラッシュアップを重ね、低コスト化の道筋をつけてきました」。

WASEDAELECTRIC BUS(WEB)の第3号。このバスは現在、サントリーの白州工場で工場見学時の移動手段として利用されている。

WASEDAELECTRIC BUS(WEB)の第3号。このバスは現在、サントリーの白州工場で工場見学時の移動手段として利用されている。

WASEDAELECTRIC BUS(WEB)の第3号。
このバスは現在、サントリーの白州工場で工場見学時の移動手段として利用されている。


今後も新たな開発へ

 現在、日本各地で路線バスを中心に約30台の電動バスが走行しているが同研究所で実用化された技術も多い。さらに「バッテリーは現在急速に進化しており、高性能なバッテリーの価格が下がってきました。電動バスは今後少しずつ普及が進むでしょう」。
 電動車両研究所の今後について、紙屋教授は以下のように話す。
 「私たちは5年から10年のスパンで実用化できる分野に注目し、それが量産されていくような研究に取り組んでいます。今では電動バスが実現に向けて一定のめどがついたので、引き続き一般の自動車メーカーが手を出しにくい分野で、二酸化炭素(CO2)排出削減効果が高く、温暖化防止に役立つ電動車両の開発に取り組んでいこうと考えています。現在、研究を進めているのはプラグインハイブリッド式のバスと、燃料電池で動くごみ収集車です。自治体が環境問題に取り組む際の選択肢になるような、そんな電動車両をつくりたいですね」。  


こぼれ話 こぼれ話

WASEDA ELECTRIC BUS(WEB)は羽田空港周辺で公道実証実験を行っており、それを知ったことが今回の取材のきっかけとなりました。
また、今後の課題として紙屋教授が挙げた「燃料電池で動くごみ収集車」ですが、これは水素を活用して電気を作り走るため、二酸化炭素の排出量はゼロです。水素は、日本政府が「水素基本戦略」を定めるなど、注目を集める次世代エネルギーです。時代の先端をいく研究を行っているのだと実感した取材でした。

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