ホーム > 環境市場新聞 > Eco Story
Eco Story 環境活動を推進する企業の物語
#23/アース製薬株式会社

社名にアース、地球との共生は使命

アンダーバー

 夏の陽気に肌も汗ばむ季節。気温が高くなると気になるのは蚊の発生だ。蚊を媒介して、マラリアやデング熱、ジカ熱など多くの感染症が引き起こされ、世界保健機関(WHO)の推計によると、マラリアだけでも年間2億人以上の罹患者と200万人の死亡者がいるとされる。最も「人を殺す生き物」は、蚊だといわれている。
 アース製薬 株式会社は長年にわたり、虫ケア用品の研究開発・製造・販売を続けてきたが、同社の事業活動は、国際社会が「持続可能な開発目標」(SDGs )として取り組むべき「感染症対策」と合致する部分が多い。

「蚊ケア指数」のサイト画面
アース製薬と日本気象協会が共同開発した「蚊ケア指数」のサイト画面。
蚊対策の必要性を5段階のアイコンで表示し注意を促す。蚊を媒介とする感染症対策の一環でもある。
全国142地点の7日先までの「蚊ケア指数」が閲覧できる。

仕切り

返品数の削減で環境負荷を抑制

 社名に「アース」を掲げる企業として、「地球との共生」の実現のために環境方針を制定したのが2007年。
 社員一人ひとりが高い意識を持って活動できるよう、当初から全社的に環境保全の取り組みを開始した。製造部門だけでなく、管理、研究開発、物流、営業といった部門が一斉に取り組むことを決め、全社員を対象にした環境教育も始めた。
 メーカーとしては、商品を末永く使えるようにすることが、お客様の利便性向上と環境配慮につながると考え、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減を意識した3R(リデュース、リユース、リサイクル)の視点で各種の製品開発に取り組んでいる。

販売店の売り場づくりを提案する専門部隊「EMAL(エマール)」
アース製薬は消費者の視点で販売店の売り場づくりを提案する専門部隊を「EMAL(エマール)」と名づけ、
全国の各営業拠点に配備している。小売店や代理店との密なコミュニケーションは、こうした場でも図られる。


 アース製薬にとって、環境負荷の軽減につながる取り組みとして、返品数の削減は大きな課題だった。商品の撤去から仕分け、メーカーへの返送という一連の作業は小売業・代理店・物流業者・メーカーの4者における手間とコストが生じるうえに、廃棄に伴う環境負荷がかかる。しかし、季節商品は天候に左右されるため、需要予測を立てるのが難しく、対策をとれないばかりか、季節商品の販売シーズンが終了した後は、一斉に返品されるという慣習もあった。
 そこで同社は、虫ケア用品業界初の本格的な返品数削減に着手する。小売店・代理店双方と密なコミュニケーションにより適正な需要予測を立て、さらに集計データから、販売シーズン終了後も一定の需要があることを導き出した。その結果から、返品ではなく、適切な数量の継続した店頭展開や倉庫保管していく仕組みをつくった。それは梱包や発送作業などで生じるコストの低減にもつながった。こうして2017年の虫ケア用品の返品率は、前期比1.9%減の8.5%と過去最低を記録。2020年は6.8%を目指している。
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーを務めるアース製薬は、世界最大のスポーツイベントで感染症予防に資する虫ケア対策の重要性を訴えるとともに、地球との共生を目指し、取り組みを続けていく。

【蚊ケア指数】パソコンサイトはこちら / スマートフォンサイトはこちら


こぼれ話 こぼれ話

熱帯・亜熱帯地域では、マラリアを媒介する蚊の対策として、殺虫成分を含んだ蚊帳が導入されています。ただ、その蚊帳を長期間使っていると蚊が殺虫成分に耐性を持つようになり、かえって流行をもたらす恐れがあるそうです。アース製薬は、殺虫剤のリーディングカンパニーとして海外展開の際は、その地域の課題を解決するため、製品開発・生産・販売・物流を自社で行う地域密着型のビジネスモデルを展開。「命に関わる商品である」という誇りをもち、事業を通じた社会課題の解決を目指しています。