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Eco Story 環境活動を推進する企業の物語
#29/鹿島建設 株式会社

炭素、無駄、悪影響──3つのゼロに向けて

アンダーバー

 鹿島建設株式会社は1840年に鹿島岩吉氏が江戸中橋正木町(現東京都中央区京橋1)で創業した建設会社。グループ従業員数が2万人(2019年3月末現在)を超えるスーパーゼネコンだ。
 建設業界では以前より騒音や振動など、工事が環境に与える影響が問題だった。その解決策を模索することで環境問題への意識を高めてきた。さらに近年の温暖化の影響と見られる豪雨や台風などの風水害への対策も社会インフラに関わる企業として見逃せない。
 環境本部地球環境室長の吉村美毅さんは話す。「近年は発注側の意識に大きな変化が見られます。従来の事業用ビルでの要求は主に働く人の快適性でした。それが昨今はBCP(事業継続計画)や施工時の二酸化炭素(CO2)排出削減手法などを具体的に示すよう求められます。世界各地で異常気象の影響が実感されはじめ、その結果、地球規模の気候変動抑制に対する考え方が急速に主流になりつつあると感じます」。

仕切り


 環境活動の基本はビジョンとして描く「トリプルZero2050」。自社の事業運営はもちろん顧客の環境・エネルギー課題解決にもこれを当てはめ行動する。そこで目指すのは①低炭素社会②資源循環型社会③自然共生社会の3つだ。
 ①は全社で2050年度に温室効果ガス排出量を80%以上削減し、最終的にはZero Carbon(炭素)を実現。②は建設廃棄物のゼロエミッション化やサステナブル資材の活用などによりZero Waste(無駄)を目指す。③は自然・生物への影響抑制や、新たな生物多様性の創出などでZero Impact(影響)を目指す。

仕切り


 トリプルZero2050の取り組みの一環として、2019年6月、環境データ評価システム「edes(イーデス)」を開発、運用開始した。従来はサンプル抽出により全体でのCO2排出量、建設廃棄物発生量、水使用量などを把握していたが、本システムにより建設現場ごとに月単位で集計し、見える化できるようになった。今後は培った知見をベースに、工事の種類や場所、期間、工程の違いなどが排出量などにどう影響するのか、より細かな考察と現場の特徴を踏まえた改善策の立案が可能になる。
 「当社は社会のため解決すべき重要課題を〝マテリアリティ〞と定義していますが、近年の風水害などを見ていると、長く使い続けられる社会インフラ、安全・安心を支える技術・サービスといったマテリアリティは、環境問題と不可分だと痛感しています。グループ全体のシナジーを高め、総合力を発揮し、社会問題の解決に貢献していきます」。

環境ビジョン トリプルZero2050

こぼれ話 こぼれ話

同社はさすがスーパーゼネコンだけあり、考えていることが地球規模でした。今回お話をお伺いした方の所属部署名も「地球環境室」、何もかも規模が大きかったです。一番印象に残ったお話は、最近のビルオーナー(特に投資家の方)は、働く人の快適性だけでなく、ESGも気にするようになったということでした。時代とともに考え方は変わりますが、それに応えている同社もさすがだなと思いました。