全加盟国参加「パリ協定」採択。今世紀後半、排出量「実質ゼロ」へ
2015年12月、気候変動枠組み条約第21回締約国会議は、「パリ協定」を採択した。京都議定書に代わる2020年以降の地球温暖化問題に取り組むための仕組み。対策の義務を負う対象国は、条約に加盟する196の国や地域すべて。全員参加の国際的ルールが初めて動き出すことになる。
全員参加の枠組みで中心となるのは、すべての加盟国が自主的に温室効果ガス排出削減目標を作成し、国連に提出すること。各国は、明らかにした目標を達成するため国内措置をとる。ただし目標未達の罰則は設けない。5年ごとの見直しを義務づけし、更新した目標は前回を超えるものにする。
個別の取り組みを積み上げて達成させる世界全体の目標も示した。産業革命前からの気温の上昇分を2℃未満に抑えるというもの。海面上昇の影響で国土の消滅が危ぶまれる島しょ国の強い要求にも配慮して1.5℃未満にするという努力目標も並記した。そのために、世界の温室効果ガス排出量を、できるだけ早い時期に減少に転じさせると明記。今世紀後半には、森林などによる吸収と、人為起源による排出が同量になる排出量「実質ゼロ」を達成することも盛り込んだ。
取り組みの効果を検証するため、各国には実施状況の報告を義務づけた。これをまとめた世界全体での進捗状況を2023年から5年ごとに検証するグローバル・ストックテイクの仕組みも用意された。
会議の中で最大の争点だったのは途上国への資金支援。条文に記載された内容は、先進国が過去の規模を上回る資金支援を、途上国に対し行うというもの。ここには具体的な拠出の目標額は明記しなかった。だが法的拘束力のない別文書(COP21決定)に「2025年までに年1000億ドル(約12兆円)を下限に新しい数値目標を設定する」と記し、合意を得た。
この協定は、世界の温室効果ガス総排出量の55%以上を占める55カ国以上の締約国が締結したのち30日後に発効する。次回の会議(COP22)は、2016年11月、モロッコのマラケシュで開催される予定。