世界の温室効果ガス濃度、最高を更新
急速な上昇率、数千年分に相当
2017年10月、世界気象機関(WMO)は、2016年12月までの観測結果をまとめた「温室効果ガス年報第13号」を公表した。年報は日本の気象庁が運営する「温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)」が、WMOのもとで観測された世界中のデータを収集・分析し、その結果に基づいて作成される。
この中で、2016年の主要な温室効果ガス(二酸化炭素〈CO2〉、メタン、一酸化二窒素)の世界平均濃度が、CO2で403.3±0.1ppmになるなど、いずれも観測史上最高を更新したことが明らかになった。工業化(1750年)以降の増加分の比率はCO2で45%になる。
年報ではトピックとしてCO2濃度の変化速度について、現状と太古の気象との比較解説も行っている。最後の氷期から現在の温暖な気候へと向かう最終氷期末期(2万〜1万年前)にはCO2濃度が80ppmほど増加したが、その上昇に要した期間は数千年にわたった。一方、現在の状況は、観測が始まった1950年代末からわずか数十年で80ppm以上の増加が記録された。同程度の上昇が、過去の自然要因の上昇と比べ約100倍のスピードで進んでいることがわかる。過去数十万年にわたる大気中のCO2濃度の変化は南極の氷床に閉じ込められた空気を分析することで解読できるという。
これらの情報が記載された年報は、2017年11月にドイツのボンで開催された気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)で配布され、基礎資料として用いられた。