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2019.02.05環 境

温暖化1.5℃で影響軽減を
IPCC特別報告書「現在すでに1℃上昇」

 2018年10月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、韓国の仁川で開かれた第48回総会で、特別報告書「1.5℃の地球温暖化」を受諾した。パリ協定の努力目標である「1.5℃未満」における温暖化の影響、リスク、適応、緩和などに関して詳細な報告が公表された。

2050年 排出量実質ゼロが必要
 国際社会はパリ協定で地球の平均気温の上昇を2℃未満にする目標を掲げ、同時に1.5℃未満にするよう努力を継続することも確認した。今回の特別報告書は、その「努力目標」に向かううえでの科学的根拠となる。
 1.5℃の温暖化でも、異常気象や海面上昇などのリスクはあるが、2℃上昇の場合と比較して、影響や被害は軽減できる。2℃になると、1.5℃の差によって、数千万人が熱波に襲われる可能性が増し、生物種の絶滅は増加、水不足の地域は拡大、夏に北極海が氷結しない現象は10倍に増えるなどの予測を示している。
 報告書では、人為活動によって、現在すでに産業革命以降1℃上昇していると推定。このままの状況が継続されると、2030〜2052年の間に1.5℃になる可能性が高いとしている。気温上昇を2℃ではなく、1.5℃に止めるためには、人為起源の二酸化炭素(CO2)排出量を2010年比で45%減少させ、2050年頃には実質ゼロにする必要があるとした。
 今世紀半ばの実質排出量ゼロには、土地、エネルギー、産業、建築、輸送、都市などの社会のあらゆる部門で、急速かつ広範な、かつてない変革がなされなくてはならないとする。具体的には、「森林伐採の停止と数十億本の植林」「世界の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を70〜85%にして化石燃料の使用を減らし、石炭火力発電をゼロに近づける」「大気中からCO2を回収し貯留する技術の開発を進める」などの取り組みが必要だとしている。
 特別報告書は、6000点以上の参考文献を引用し、世界各国の執筆者91人によって作成された。専門家と政府からの査読コメントは4万件以上を数えた。IPCCでは、この特別報告書に続き、全体をまとめる評価報告書とは別に、「変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書」「気候変動と土地」の2件を2019年に発表する予定。

IPCC特別報告書のポイント
▽ 産業革命前と比較して、地球の平均気温は現在すでに1℃上昇している。
▽ 地球温暖化が現在の状況で続けば、早ければ2030年、遅くとも2052年までに1.5℃上昇する可能性が高い。
▽ 2℃上昇した場合は、1.5℃の上昇よりも、極端な高温、強雨、干ばつ、生物多様性や人の健康への悪影響など、多くのリスクが明確に高くなる。
▽ 気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、2030年までに人為的な二酸化炭素(CO2)の排出量を2010年比で45%減らし、2050年頃には実質ゼロにする必要がある。
▽ 1.5℃以内に抑えるための活動には、社会のあらゆる側面で、急速かつ広範な、これまで例のないような変化をもたらす取り組みが必要になる。

IPCC
 「気候変動に関する政府間パネル」の略称。1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立された国連機関。地球温暖化についての科学的評価を担当する。
 評価報告書の作成には世界各国の研究者数千名が参加し、その報告内容は気候変動枠組み条約締約国会議(COP)などの議論における重要な科学的根拠となる。現在、第6次評価報告書の作成が進められている。