水災害対策の新たな方針提示
国土交通省審議会答申「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方」
国土交通省は2020年7月、社会資本整備審議会へ諮問していた「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方」の答申がまとまったと発表した。大きな被害をもたらしている近年の水災害、地球温暖化など気候変動の状況、技術革新が進む社会動向を整理し、今後の水災害対策の方向性を示している。
まとめられた答申のポイントは大きく2つ。1つは「計画・基準類の見直し」。従来は、過去の降雨量や潮位の実績に基づいて想定される水災害に対して対策計画などを策定していた。今後はその基準を改め、気候変動による降雨量の増加や潮位の上昇などを考慮して計画を見直す。例えば、パリ協定の2℃目標が達成できた場合でも降雨量は約1.1倍になるなどの要素を加味する。
もう1つは「流域治水」への転換。これまでの治水は、河川、下水道、砂防、海岸などの管理者が主体となったハード面の対策であり、それを主に河川区域や氾濫域で実施してきた。今後はそこに携わる人たちを国、自治体、企業、住民など流域全体のあらゆる関係者とし、協働による対策に変えていく。対象の地域も、河川区域、氾濫域に加え、雨水を河川に流す山間部などの集水域も含めて1つの流域と考え、その全体で対策を進めていく。
「流域治水」では、堤防や貯留施設などの整備を行う「氾濫をできるだけ防ぐ対策」、氾濫を想定したまちづくりなどの「被害対象を減少させるための対策」、氾濫時の避難や早期復旧に取り組む「被害の軽減、早期復旧・復興のための対策」の3つを、総合的かつ多層的に取り組む。