地域の環境、色濃く反映
「継続」と「地域連携」で広がる環境意識
環境市場新聞では、2011年春季・24号より「日本の環境教育」と題して、全国各地の小・中・高・大学での環境教育の実例を紹介してきた。なかでも多くみられた特徴が、1年間のカリキュラムを越えた学習の「継続」がもたらす子どもたちの変化や成長。学年の枠を超えた合同授業や、卒業生から引き継がれた学習成果が、内容の濃い授業を形成していく。これまでの記事を振り返り、環境教育の特徴をまとめる。
「継続」することで深まる理解力
千葉県木更津市の市立金田小学校では、20年ほど前から、東京湾最大規模の広さをもつ盤州干潟でのフィールドワークに取り組んでいる。1、2年生の学習テーマは「干潟を楽しむ」こと。3、4年生では、「干潟を知ること」を課題に、干潟に棲む生物の特徴を調べて手づくりの生物図鑑をつくる。さらに5、6年生では「干潟への理解を深める」ために、盤州干潟と他エリアの干潟を比較し、そこから世界の環境問題についても調査を広げる。子どもたちは6年間の段階的な体験を通して、盤州干潟が持つ豊かな生態系や特性を深く理解していく。
岩手県北上市の県立黒沢尻工業高等学校では、9年前にエネルギー教育実践校の指定を受けたことをきっかけに、近隣の小中学校での出前授業を続けている。生徒にとっての一番の成果は「教える楽しさ」を知ること。子どもたちに理解してもらうには、まず教える側の高校生が内容を深く理解する必要がある。つまり、しっかりとした学習の習慣が身についていることが前提。出前授業を行うには授業内容に対する反省と改善の繰り返しが大切であり、そうすることで、卒業時には生徒がやる気を出して自ら物事に取り組む姿が見られるという。さらに同校では、授業で使用した生徒手づくりの実験道具を小中学校に寄贈。出前授業が生徒の学習意欲を高めるとともに、地域全体の環境教育の向上にもつながっている。
経験豊かな特別講師
もうひとつの特徴は、地域住民との連携や周囲の自然環境との強いつながり。岐阜県関市にある市立洞戸中学校では、地元木材店の店主を講師に迎え、生徒が山林での間伐作業を体験。チェーンソーを使った伐採など、経験豊かな専門家ならではの授業が展開されている。岐阜県では、地域環境への関心・理解を深め、地域の将来を支える子どもの育成を目的に、県をあげて、講師の派遣やプログラム紹介などの支援を行っている。
地域と連携を通した授業を続けることで、学校の授業だけでは知りえない、産業や自然環境など、いわば地域の財産ともいえる事象が子どもたちに伝えられる。学校全体としても、専門知識の蓄積や、授業の質の向上、教諭の負担軽減など、さまざまなメリットがある。いずれは卒業を迎える子どもたちだが、環境教育で培った地域との結びつきや愛着、身についた知識が途切れることはない。子どもたちの成長が、環境意識を地域に還元し、さらなる広がりにつながっていく。
足掛け24回にわたる連載が終わりました。
たとえば、本編で紹介した黒沢尻工業高校の出前授業ですが、受け入れる側は、最初「工業高校の生徒は怖いかも」と躊躇したこともあったそうです。しかし、地元の大学との連携や、授業カリキュラムに沿った内容を盛り込むことで、訪問先が徐々に増えていき、たくさんの小中学校とつながりをもつようになったそうです。
取材でこうした話を伺うたびに、地域のつながりが薄れてきた昨今、こうした前向きな取り組みは着実に地方を変える原動力になるな、と思いました。
なお、私事ですが私はこの度「産休」に入ることとなりました。子供と共にしばらくお休みをいただき、またパワーアップして帰って参ります!