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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

揚水発電所の新たな価値
再エネ大量導入時代に向けた役割

 揚水式発電とは、発電所の上部と下部に水を貯える調整池をつくり、電力需要が大きな昼間時間帯は上部から下部へ水を流下させて発電し、電力需要の少ない夜間時間帯には、余剰電気で水車を逆回転させて下から上にあげておき、再び発電に使う仕組みである。最大発電出力への到達および停止が短時間でできるため、他の発送電設備の事故などにより電気が不足した際の緊急用設備としても重要な役割を担っている。
 1892年にスイスのチューリヒ発電所が世界で最初に建設され、日本では1965年頃から相次いでつくられるようになり、現在では総出力2600万kW以上の設備がある。例えば東京電力8番目の揚水発電所である葛野川発電所は単段ポンプでは世界一の揚程(水路の長さ)778mを有し、合計出力160万kWの重要な電源となっている。
 これまでの揚水発電は、一定出力で運転する原子力発電所からの夜間の安価な余剰電力を利用することが多かった。だが東日本大震災以降、原発の再稼働は難航。現在数基しか稼働しておらず、夜間と昼間の発電コストの差は減少し、揚水発電所の意義が薄れている。
 その一方で、環境対策の面から太陽光や風力のような再生可能エネルギー(再エネ)の大量導入が図られるようになった。だが再エネは出力の不安定性が課題で、系統の電力品質への影響が懸念される。その出力変動の不安定さを揚水発電の運用により抑制する動きが注目されているのである。これまではスケールメリットを求め原発と電力大消費地を結ぶ位置に立地した揚水発電だが、今後は不安定電源(再エネ)の近傍に分散してつくるのが望まれるだろう。
 そこに活用できるのは、旧式化した中型の混合揚水や全国に約20万カ所(2014年3月時点)ある農業用水用のため池など既存設備である。これらを利用すれば投資効果は高く、小型ながら高速で大きな調整力を持つ揚水発電を不安定電源の近くに設置できる。大容量化を目標にした既存の揚水発電に対し、電力市場が求めるコンパクト機能の技術開発を進めれば、新たなシーズも生まれる。
 欧州では、再エネの出力変動を吸収する小型で発電・揚水が同時に行える技術も開発されており、再エネ大量導入時代にあって揚水発電の新たな価値が再認識されている。  

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