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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

再生可能エネルギー大量導入時に
スマートインバータが果たす役割

 経済産業省の「地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業)」では前年度に続き2020年度も公募が実施され、多数の案件が採択された。
 地域マイクログリッドは電力供給の一形態。通常運転時は電力系統と1点で接続しており、マイクログリッド内部で需給調整し、連系電力を調整する。しかし電力系統が災害で停電した場合などは、その連系点を切り離し、自立運転をしてマイクログリッド内へ電力を供給する。このような運転が可能になればレジリエンシーの強化につながり、人命救助などにも貢献することから、自然災害が多発する今後の社会には必要不可欠になると思われる。
 通常、自立運転する地域マイクログリッドでは、回転型発電機による電力が減少し、再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力が増加する。系統内の回転型の電力が減ると慣性が少なくなり負荷変動に対する周波数変動が大きくなる。それらの問題の解決技術として注目されているのがスマートインバータだ。スマートインバータは、需給バランスが崩れて周波数が変動するような場合、発生電力を制御して系統の周波数変動を少なくする機能を持つ。また電圧が変動した場合には、無効電力を制御して電圧の変動量を抑制する働きもある。
 そこで、二次電池電力貯蔵装置(BESS)にスマートインバータを設置する提案がなされている。これまでのインバータは上位の制御装置(EMS)からの電力指令値に従って充放電電力制御を行っており、系統の周波数を見て制御はしていなかった。一方、スマートインバータは自ら周波数を監視し、付加した電力│周波数垂下特性により周波数が低下する場合には電力を多く出力して周波数低下を抑制し、逆に周波数が上昇するときは電力を下げて周波数上昇を抑制することができる。回転型発電機が少なくなる場合の慣性力の低下を補える仕組みだ。
 地域マイクログリッドでは系統の周波数制御能力は小さいので、スマートインバータを実装することによりマイクログリッドの安定運転を可能にする。また系統の電圧に対してもスマートインバータ自身で出す無効電力量を調整して系統の電圧維持に貢献できる。再エネ大量導入時代の電力グリッド運用には、スマートインバータの果たす役割が不可欠だ。