グループ全体の約束「水と生きる」
総合飲料メーカーのサントリー。1899年、鳥井信治郎氏が大阪市に「鳥井商店」を開業したのが始まりだ。サントリーグループはグローバルにビジネスを展開しており、グループ会社数は約300社を誇る。現在ウイスキーをはじめ、ビールやソフトドリンクなど、さまざまな飲料を生産し消費者へ届けている。
使用量の倍、水を育む森づくり
同社グループは、飲料を生産するにあたって主な原料となる「水」に強いこだわりがある。それを表現しているのはテレビコマーシャルなどでも使われており、グループ全体の「約束」として掲げられている「水と生きる」という言葉だ。同社のコーポレートサステナビリティ推進本部サステナビリティ推進部専
任部長の椎名武伸さんは、「自然との共生を目指し、次世代にその恵みをつなげていくのがサントリーグループの責務です」と話す。同社グループの山崎、白州の蒸溜所および各地のビール工場では、天然水(地下水)を仕込み水として使用し商品を生産している。こうした生産手法は他社では見られない。
このように天然水にこだわる同社グループだが、同時に水を育む森林への思いも強い。2003年にサントリー「天然水の森」活動をスタートさせている。良質な地下水の持続可能性を将来にわたって保全する責任があるという考えのもと、「水と生命の未来を守る」ことを目指す。2020年までに「天然水の森」を1万2000ヘクタールまで拡大し、工場で汲み上げる地下水の2倍の量を森で育む目標を掲げた。その目標数値は、2019年6月末時点でほぼ達成できている。
また、同社グループは次世代に向けた独自のプログラム「水育(みずいく)」も実施している。未来を担う子どもたちに自然の素晴らしさ、水や水を育む森の大切さを伝える活動だ。「森と水の学校」は2004年に開校し、2006年からは各地で出張授業も行っている。これまでに合計約16万人が参加した。
ビームサントリー社で行われた植樹活動の様子。
2017年1月には、「水理念」を策定した。これまで国内で水のサステナビリティを培ってきたが、それをグローバルに展開していくことが目的だ。例えば、アメリカのビームサントリー社やベトナムのサントリーペプシコ社などでは、天然水の保全活動や水育を展開。「水と生きる」というグループ全体の約束が、着実に全世界に広がっている。
大きく大切な役割を、サントリーグループは背負っていこうとしている。
同社グループの約束である「水と生きる」という言葉。グループ会社約300社にこの言葉の意味を理解してもらい、活動を実践していただくのは相当大変だったようです。まずはそれぞれの企業のCSR(企業の社会的責任)担当者を教育し、それを担当者が社内に広めていく。例えば、アメリカのビームサントリー社には225年の歴史があり、サントリーの120年という年数に比べ2倍近く長いのです。理念を頭で理解してもらうのでなく「体感」してもらうために、植樹などの実践活動に重点を置くことで理念は徐々に浸透していく、とのお話が印象的でした。