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Eco Story 環境活動を推進する企業の物語
#30/ヤンマーホールディングス 株式会社

創業者の思いを継ぎ次世代へ

アンダーバー

 ヤンマーグループは1912年に山岡孫吉氏が創業し、世界初の小形ディーゼルエンジンの開発・実用化に成功した、農機具に端を発する産業機械メーカー。大阪府に本社を置き、グループ従業員約2万1000人(2020年3月31日現在)を抱える企業だ。

仕切り

環境配慮も徹底
ヤンマーミュージアム

 創業100周年を迎えた2012年に記念事業として取り組んだのが、ヤンマーミュージアムの建設である。場所は山岡孫吉氏の生誕の地・滋賀県長浜市。2013年のオープン以来、来館者数は約64万人を数え、2019年10月にはリニューアルオープンしている。
 開設当初はお世話になった人たちへ感謝の気持ちを表すとともに、自社事業を広く告知するのが目的だったが、リニューアルでは、山岡孫吉氏が最も大切にしていた「チャレンジ精神」をメインテーマに、次世代育成に舵を切り、子ども向けの情報提供を充実させた。
 展示はヤンマーグループの事業領域である「大地(LAND)」「海(SEA)」「都市(CITY)」をイメージした3つのエリアに分けられ、頭や体を使った体験型の展示が楽しめる。さらに、現在はコロナ禍で休止となっているが、「ものづくり」「農業」「自然・環境」などをテーマにしたワークショップも人気の企画だ。屋上のビオトープには、各所に設置されたQRコードを読み取るとそこに生息する種類の生き物や植物の情報が端末に読み込まれる仕掛けも用意されている。
環境配慮も怠らない。建物入口のひさしは8mせり出しており、一部に太陽光パネルを設置している。これにより年間で杉の木約1万本の吸収量に相当する二酸化炭素(CO2)の排出削減ができる。また建物の外周には水盤を配置し、反射光による自然採光を取り入れることで照明の数を減らした。水盤は夏場の温度上昇を抑制し、自然通風を建物内に取り込み冷却する効果もある。さらに、屋上のビオトープは、緑化により日射負荷を軽減している。

ヤンマーミュージアムの正面入口から見た外観
ヤンマーミュージアムの正面入口から見た外観
屋上につくられたビオトープ
屋上につくられたビオトープには、各所に設置されたQRコードで、
ここに生息する20種類の動植物の情報を読み取ることができる。
仕切り


 今後の展開について館長の山本昇さんは「大人向けのコンテンツも検討していきたいですね。また、食料や環境、持続可能性の問題も訴求できたらと考えています。そして、現在休止中のワークショップは再開を望む声が多くあり、4月以降より順次開催したいと考えています」と語る。創業者の思いを引き継ぎチャレンジを続けるヤンマーミュージアム。その空間にどんな企画が追加されていくのか期待は尽きない。

こぼれ話 こぼれ話

今回訪れたヤンマーミュージアムはオープン以来、順調に来館者数を伸ばしていますが、昨年はさすがに新型コロナウイルスには勝てず、2020年2月末~6月上旬まで閉館したそうです。再オープンの際には、コロナ対策で密を避けるため、入館を事前予約制にしたり、入館時間も2時間制にしたりと、さまざまな対策で感染防止に取り組んでいました。私が見学したときには、閉鎖しているアトラクションもありました。来場者には不便を伴う苦渋の決断であったことが、担当者の表情からも窺うことができました。