現在、環境問題に関するさまざまな書籍が出版されていますが、その種類の多さに迷わされてる方もいるのではないでしょうか。環境市場新聞編集部が厳選した本を紹介していきますので、気になった本があればぜひ手に取ってみてください。環境問題について一緒に考えていきましょう。
佐藤健太郎 著

炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす

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温暖化を招く炭素、人類をつくる炭素
 酸素、水素、鉄、金、ナトリウムなど120種近くある元素。その元素同士が結びついてできたものを化合物という。現在知られているこの化合物の種類は7000万以上に及び、このうちの約8割に炭素が含まれている──そんな化学の知識を紹介しながら、本書が掘り下げているのは、炭素の化合物によって生かされている私たち人類の来し方であり、行く末だ。
 書店で本書を手に取り、ぱらぱらめくると、所々に分子構造を示す図表を目にするだろう。化学や理系分野は苦手という人は、それだけで敬遠してしまうかもしれない。だが、臆せず読んでほしい。専門知識は必要ない。あえて必要といえば、好奇心だろう。何しろ炭素の化合物は人間の身体を含め、あらゆるところにあり、それがもたらす興味深いエピソードが存分に披露されているからだ。
 語られる分野は、食料、酒・煙草、薬物、爆薬、石炭に石油といったモノだけでなく、日本史、世界史、中国の三国志などコトにも及ぶ。炭素は温暖化を招く物質も構成し、人間の身体もつくる。変幻自在の性質が解説されるのだから、分野も関心も尽きず、ページをめくる手も止まらない。

炭素文明論 -佐藤健太郎-著 新潮選書 1,300円+税さとう けんたろう1970年、兵庫県生まれ。サイエンスライター。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。著書に「有機化学美術館へようこそ」「化学物質はなぜ嫌われるのか」「創薬科学入門」など。
一般社団法人 Think the Earth 編著

グリーンパワーブック 再生可能エネルギー入門

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大人が使える子ども向け入門書
 「本書は再生可能エネルギー教育の副読本として製作されましたが、大人でも読み応えがあるように編集しています」(156ページ)という記述のとおり、教養を深める目的の一般書籍と比較しても、少しも引けを取らない内容。それでいて本来のターゲットである子どもに向けても、理解を深められるやさしい言葉づかいがちりばめられている。そこには良書を提供したいというつくり手のひたむきな姿勢がうかがえる。
 例えば、地球上の風は、もとをたどれば太陽の熱に起因する。その大人でも気づくことが少ない知識を「風のお母さんは太陽だって知ってる? 太陽が地球の空気を温めると、温まった空気は軽くなって上に上がり、薄くなったところをうめるように、まわりから冷たい空気が移動してくる。それが風なんだ」(18ページ)と解説する。風力発電を紹介する導入部だ。
 同様に地熱を「大地」、バイオマスを「生きもの」と言い換え、太陽光、風力、水力といった再生可能エネルギーの仕組みや現状、普及を妨げる課題までにも言及している。これから学ぶ人も、知識を再確認したい人も、子どもにも大人にも適した一冊。

グリーンパワーブック ダイヤモンド社 1000円+税 しんくじあーす 「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに2001年に発足。環境問題や社会問題に関する情報を書籍やウェブで発信している。これまで「1秒の世界」「いきものがたりー生物多様性 11の話」などを出版。