
炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす

温暖化を招く炭素、人類をつくる炭素
酸素、水素、鉄、金、ナトリウムなど120種近くある元素。その元素同士が結びついてできたものを化合物という。現在知られているこの化合物の種類は7000万以上に及び、このうちの約8割に炭素が含まれている──そんな化学の知識を紹介しながら、本書が掘り下げているのは、炭素の化合物によって生かされている私たち人類の来し方であり、行く末だ。
書店で本書を手に取り、ぱらぱらめくると、所々に分子構造を示す図表を目にするだろう。化学や理系分野は苦手という人は、それだけで敬遠してしまうかもしれない。だが、臆せず読んでほしい。専門知識は必要ない。あえて必要といえば、好奇心だろう。何しろ炭素の化合物は人間の身体を含め、あらゆるところにあり、それがもたらす興味深いエピソードが存分に披露されているからだ。
語られる分野は、食料、酒・煙草、薬物、爆薬、石炭に石油といったモノだけでなく、日本史、世界史、中国の三国志などコトにも及ぶ。炭素は温暖化を招く物質も構成し、人間の身体もつくる。変幻自在の性質が解説されるのだから、分野も関心も尽きず、ページをめくる手も止まらない。


グリーンパワーブック 再生可能エネルギー入門

大人が使える子ども向け入門書
「本書は再生可能エネルギー教育の副読本として製作されましたが、大人でも読み応えがあるように編集しています」(156ページ)という記述のとおり、教養を深める目的の一般書籍と比較しても、少しも引けを取らない内容。それでいて本来のターゲットである子どもに向けても、理解を深められるやさしい言葉づかいがちりばめられている。そこには良書を提供したいというつくり手のひたむきな姿勢がうかがえる。
例えば、地球上の風は、もとをたどれば太陽の熱に起因する。その大人でも気づくことが少ない知識を「風のお母さんは太陽だって知ってる? 太陽が地球の空気を温めると、温まった空気は軽くなって上に上がり、薄くなったところをうめるように、まわりから冷たい空気が移動してくる。それが風なんだ」(18ページ)と解説する。風力発電を紹介する導入部だ。
同様に地熱を「大地」、バイオマスを「生きもの」と言い換え、太陽光、風力、水力といった再生可能エネルギーの仕組みや現状、普及を妨げる課題までにも言及している。これから学ぶ人も、知識を再確認したい人も、子どもにも大人にも適した一冊。


- v62_2020Autumn
60分でわかる! SDGs 超入門 - v61_2020Summer
新装版 ことわざの生態学── 森・人・環境考 - v60_2020Spring
手塚マンガでエコロジー入門 - v59_2020Winter
生き物の死にざま - v58_2019Autumn
クジラのおなかからプラスチック - v57_2019Summer
この本は環境法の入門書のフリをしています - v56_2019Spring
絶滅できない動物たち - v55_2019Winter
北極がなくなる日 - v54_2018Autumn
絶滅危惧の地味な虫たち── 失われる自然を求めて - v53_2018Summer
不都合な真実2 - v52_2018Spring
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか - v51_2018Winter
樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 - v50_2017Autumn
チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る - v49_2017Summer
歩く、見る、聞く 人びとの自然再生 - v48_2017Spring
森と日本人の1500年 森をつくったのは自然ではなく人だった - v47_2017Winter
気候を人工的に操作する 地球温暖化に挑むジオエンジニアリング - v46_2016Autumn
里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く - v45_2016Summer
大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち - v44_2016Spring
ルポ にっぽんのごみ - v43_2016Winter
われらをめぐる海 - v42_2015Autumn
新炭素革命 地球を救うウルトラ"C" - v41_2015Summer
儲かる農業論 エネルギー兼業農家のすすめ - v40_2015Spring
生物多様性のしくみを解く - v39_2015Winter
誤解だらけの電力問題 - v38_2014Autumn
愚者が訊く/
地図で読む 日本の再生可能エネルギー - v37_2014Summer
炭素文明論/
グリーンパワーブック