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日本テクノ協力会・日電協の水戸グループでは、猫の語り口が特徴のオリジナル情報誌「でんでん・みと情報」を定期的に発行しており、環境市場新聞では毎号のダイジェスト版を掲載しています。最新号やバックナンバーは右のバナーからダウンロードできます。

月への旅行はエレベーターで行く

アンダーバー

 吾輩は、電気管理技術者の親方たちに飼われている猫の〝でんでん〟である。
 吾輩の頭脳をもってすれば、とるに足らない浮き世の事象で、おおよそ理解できぬものはない。しかし、何事にも例外はあるもので、吾輩の英知が及ばぬ領域もある。いかに空中トンボ返りしても、理解できぬのが人間が希望する物事である。
 先ごろ、吾輩の居住地近くにとてつもなく高い建築物が建てられた。親方の話によれば、日立製作所がつくった「G1TOWER(ジーワンタワー)」なるもので、高さ213mにもなるエレベーターの実験施設だという。
 親方たちは、その施設を眺めながら、またもや話を飛躍させ、とっぴなよもやま話を始めた。なんと月へ行く宇宙エレベーターの実現性が高まったという話題だ。
 これまではエレベーターを運ぶケーブルが、自重に耐えられず宇宙までの距離をつなぐのは無理だった。それが、カーボンナノチューブという新素材の発見で長距離でも問題はなくなるのだという。カーボンナノチューブとやらは、強度が鉄の400倍で、アルミニウムの半分の軽さなのだと、どこぞのモノの本から情報を仕入れた親方は息巻いて話し、それを聞く別の親方たちは、熱心に耳を傾けていた。
 吾輩には理解できぬ。なぜ人間はそうも話を複雑怪奇にこね回すのか。月に行くのなど簡単ではないか。月は上空にあるだけではなく、水たまりにも映るではないか。そこに飛び込めば、それが月面なのである。
 とりもなおさず、人間が吾輩の英知に到達できるまでには、相当な時間を要するようである。