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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

卸電力市場の価格決定メカニズムと今後の課題

 規制緩和後、電力小売り市場には500社超の新電力が参入しているが、その多くは自社で発電所を持たず、発電所を持つ企業と契約する、あるいは日本卸電力取引所(JEPX)から電力を購入し、消費者に電気を供給している。現在沖縄を除く全国9エリアで電力が売買され、価格は30分単位で変動する。電力の価格を決定づけるのは需給バランスである。
 2019年3月11日から15日にかけて、電力価格が東西両地域ともに前週比で下落した。特に西日本では天候に恵まれたことで潤沢な太陽光発電が市場に流入し、価格を押し下げる働きをした。九州エリアでは需要に対し供給が大幅に上回ったため、14日を除く4日間で再生可能エネルギー(再エネ)の出力制御が実施された。出力制御とは発電量が消費量を上回ることが予測される際、再エネの発電事業者が送電網への送電を停止・減少させることをいう。需要が最も低下する12時台には0.01円/kW時という安値をつける日もあった。
 このように新電力にとって重要な調達先であるJEPXの取引価格は、需給状況によって大きく乱高下することがあり、新電力の経営を圧迫する一因になる。一般家庭の平均的な電気料金の単価は27円/kW時程度であるが、JEPXでは2019年8月6〜9日の北海道・東北・東京エリアで60円/kW時を記録。梅雨が明け、気温が上昇したため冷房需要が高まったことが要因とみられる。2018年2月には瞬間的に100円/kW時を超えたこともある。
 電力市場の安定性と持続性の側面からすれば、価格変動を抑えるための改善が必要といえる。例えば2019年7月から季節・天候・昼夜を問わず一定量の電力を安定的かつ比較的低コストで供給できる水力や石炭火力、原子力などの電力を取引するベースロード市場で入札が始まったが、今後はこちらを使った取引も盛んになるだろう。
 九州エリアの場合、他のエリアをつなぐ地域間連系線の容量が小さいため、供給が余っていても他エリアに融通できないという指摘もある。地域間連系線容量を増加すれば、九州だけ0.01円/kW時になるという極端な状況はなくなり、九州も含めた西日本全体の市場価格が平均的に下がるという広域メリットオーダーを進めることができる。
 今後は九州エリアだけでなく日本各地で再エネの出力制御が増えると予想される。その事態を防ぐため、送電線の空き容量を増やすべく工夫する必要がある。今後の再エネの動向を注意深く見守りたい。