「豊かな生活と環境」への期待の高まりを背景に日本らしさ・地域らしさを推進する運動が活況を呈しています。「環境知識」では気候変動・生物多様性の話から注目の政策、地産地消運動まで幅広く取り上げ、そのポイントをわかりやすい解説も交えてお届けします。

「気候変動と異常気象」
未来の地球の姿

 2013年1月、オーストラリア最大の都市シドニーで過去最高気温45.8℃を観測した。5月にはアメリカのオクラホマ州で巨大竜巻が発生した。世界のいたるところで今までに経験したことのない異常気象が多発している。
 異常気象は地球全体を包括する気候システムの変動で引き起こされる。それは大気、陸面、雪氷、海洋や生物などの各要素が複雑に相互作用するシステムであり、主に太陽光線が大きく影響する。①入射する太陽光線②雲に当たり反射する太陽光線③地球が反射する太陽光線。これら3つの放射される太陽光線(エネルギー)がさまざまな過程を経て変化する動きである。
 例えば、曇った日の夜が晴れた日の夜より暖かいという現象。これは、③の地球から反射して宇宙に放出されるはずの太陽エネルギーが、雲に遮られ、あたかも雲が毛布のような役目をはたして地上の気温を保つ自然の温室効果だ。
 温室効果を生むのは雲以外にもある。その代表が二酸化炭素(CO2)。化石燃料の使用や森の消失など人間活動によって増加している気体である。産業革命以前は約280PPMだったが、2100年には500~900PPMまで増えると予測されている。
 毛布のような温室効果を生むCO2の増加で、地球の温暖化は進んでいる。暖かくなることで雪や氷が融け、地面や水面が現れ、より多く太陽エネルギーを吸収し、さらに気温が上がるという循環作用がある。そうした温暖化によって冒頭にあげたような異常気象は頻発する。異常高温だけでなく、暴風雨や干ばつなどの現象が、より大きな破壊力を持つ。温暖化で海水温が上がれば、海中の生態系にも影響を与える。水温の変化に敏感なサンゴが弱り白くなってしまう白化現象が広がり、サンゴ礁に住む魚たちが行き場を失う。
 異常気象は、私たちの目の前で短期的に起こるもの。一方、気候システムは、月単位から数百万年にわたる気象データをもとに解析されるもの。異常気象は、未来の地球の姿を予想させる人類への警告なのかもしれない。