「豊かな生活と環境」への期待の高まりを背景に日本らしさ・地域らしさを推進する運動が活況を呈しています。「環境知識」では気候変動・生物多様性の話から注目の政策、地産地消運動まで幅広く取り上げ、そのポイントをわかりやすい解説も交えてお届けします。

太陽光発電
「自然と暮らしがつながる時代」(1)

 2012年の世界の太陽光発電の導入量は前年比35%増、5年前の2007年に比べ約16倍もの急激な拡大をみせている。この太陽光発電について、今回と次回の2回にわたり、その歴史的背景や開発の経緯などを紹介していこう。
今をさかのぼること174年前。1839年、物質に光を当てると電気が発生する現象が発見された。その後、約1世紀を隔てた1954年、アメリカのベル電話研究所で別研究の副産物として太陽の光を利用した太陽電池が発明される。
1973年、第一次石油危機が高度経済成長中の日本経済を直撃。ここから日本の太陽光発電への取り組みは動き始め、太陽エネルギーを石油の代替エネルギーとして利用する計画が政策に盛り込まれていった。
70年代後半は集積型アモルファスシリコン太陽電池の実用化や、世界初の太陽電池を搭載した電卓の発売など各メーカーでの技術開発が一気に進む。電卓は今でも最も身近な太陽光発電といえるだろう。
1980年、新たなエネルギーの開発・利用促進を目的とした組織である現在のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が創設。さらにこの年、ソーラーシステム普及促進融資制度が始まる。この制度は1996年まで16年間継続され、融資件数は累計27万4000件にのぼった。
1993年、系統連系技術要件ガイドラインが改定され、昼間の余剰電力を電力会社が買い取り、足りない場合は電力会社から供給を受けるという双方向のシステムが確立する。 これにより設置コストをより早く回収することが可能となった。太陽光発電設備の普及に弾みがかかっていく。
そして1997年、資源の枯渇や温暖化問題を世界的規模で解決すべく第3回気候変動枠組条約締約国会議が京都で開催される。ここでは拘束力のある削減目標を明確にした京都議定書が採択された。太陽光に代表される再生可能エネルギーへの期待は増していく。
ベル電話研究所での太陽電池の発明から約60年。ようやくそのシステムが暮らしの身近なところへ浸透し、動き出している。