
「自然と調和」する老舗クリーニング企業

株式会社白洋舎は1906年に創業した老舗クリーニング企業。創業翌年には海外で開発されたドライクリーニングを日本で初めて導入するなど、業界に先駆けて新サービス提供や技術革新を行ってきた。そこから1世紀余り、現在はクリーニング事業だけでなく、ユニフォームなどのレンタル事業、オフィスや店舗の清掃などのクリーンサービス事業も展開し、人々の清潔で快適な生活空間づくりに貢献している。

排出量は法定基準の40分の1
同社は経営ビジョンの1つに「自然との調和」を掲げる。クリーニング業は石油や化学物質と密接な関係にありエネルギーの消費量も多い。そこで1934年に白洋舎化学研究所(現・洗濯科学研究所)を開設し、環境に配慮しながら事業を進めてきた。
この研究所はメーカーと共同で洗剤や洗浄液、加工剤など品質の向上に向けた技術開発を行うほか、クリーニング工場の排水を検査し化学物質の濃度測定も実施している。ドライクリーニングに使用されるテトラクロロエチレンは労働安全衛生法上の特定化学物質に登録されており、水質汚濁防止法でも排出量に法定基準(0.1mg/ℓ)が設けられている。同社ではさらに厳しい社内基準(0.05mg/ℓ)を設定し、毎月すべての工場から排水を集め、テトラクロロエチレンなどの排出量を検査する。実績は、0.0025mg/ℓで法定基準の40分の1だ。

洗濯科学研究所では、環境に配慮した技術開発と自社業務の検証を行っている。
こうした取り組みは、世界各国からクリーニング会社が集う「グローバル・ベスト・プラクティス・アワード2018」で評価され、サステナ
ビリティ大賞が授与された。品質管理やイノベーションなどを含む総合評価でも世界350超の企業のうち第2位に選ばれている。

「グローバル・ベスト・プラクティス・アワード2018」では高い評価を受けた。

また、エンドユーザーとのつながりの中でも環境活動を進める。プラスチック製ハンガーの返却、マイバッグの持参などにより持ち帰り用の袋が不要な場合はエコポイントを付与。ポイントが貯まるとプレゼントと交換する制度も設けた。基本的にハンガーはリユース、傷ついたものはリサイクルし、目標回収率は70 %。実際2018年に回収したハンガーは約338万本で回収率68%だった。これは、ブナの木約1万本が1年間に吸収する二
酸化炭素(CO2 )と同量の削減効果だ。
取締役工場部長兼洗濯科学研究所長の萩野仁さんは「環境配慮の流れは進み、化学物質の排出規制はさらに厳しくなる。当研究所でも引き続き環境に配慮した技術の開発を進めて、その流れを先取りしていくつもりです。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、訪日外国人が増えます。皆様が、快適に滞在できるよう事業を通して支援したいですね」と話す。


同社本社には創業者である五十嵐健治記念洗濯資料館があります。クリーニングに生涯をささげた故人を偲ぶ遺品、著書や写真のほか、昔のクリーニング機やアイロンを展示。洗剤として用いられた植物や、洗濯板、洗い桶などを通して、クリーニング業の歩みを辿ることができます。また、一部の工場では学校の社会科見学など団体向けに工場見学を実施しているそうです。

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