人口 | 27,163人※2012年11月末現在 |
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面積 | 162.90km² |
市HP | http://www.city.minamata.lg.jp/ |
備考 | 環境モデル都市(2008年認定) 環境市場新聞31号掲載 |
負の遺産は富の資産へ
熊本県の南西部、九州山地と不知火海に囲まれた人口約2万7000人の自然豊かな小都市「水俣」は、1992年、日本で初めて「環境モデル都市づくり宣言」を行い、2008年、政府から「環境モデル都市」として選定された自治体の一つである。水俣市が環境先進都市として注目されるまでには、長い道のりと、忘れてはならない過去がある。
水俣病の原点 百間排水口
今から57年前の1956年5月1日、公害の原点ともいわれる水俣病が公式に確認された。水俣病は、化学工業会社チッソの廃液に含まれるメチル水銀が水俣湾に流出し、その海水で育った魚介類を人間が食べることにより発症する。環境汚染が原因で、食物連鎖により発症する病気である。
港町であった水俣からは、多数の患者・死者が出て地域の主力産業である漁業や住民の生活に多大な損害をもたらした。水俣は、水俣病の根源をつくったチッソの企業城下町としての側面も持ち合わせており、チッソ工場に勤めている市民も数多くいたため、身内に加害者と被害者が混在するという事態も起こった。
水俣病という負の遺産を抱えた水俣は、この出来事を決して無駄にしてはならないと考えた。環境の転換無くして水俣の発展はありえない。「負の遺産」は「富の資産」に変える。そうして、いち早く環境に配慮した街づくりが進められていく。それが水俣の原動力だ。
徹底的なゴミ分別
ゴミの分別は24種類に及ぶ
水俣市は環境への取り組み4本柱として「環境配慮型の暮らしの実践」「環境にこだわった産業づくり」「自然と共生する環境保全型都市づくり」「環境学習都市づくり」を掲げている。これが環境モデル都市としての土台である。中でも特徴的な取り組みが二つある。一つは、ゴミの高度分別。月に1回(紙類・ペットボトルは2回)の資源ゴミ全品目の収集日には、住民らが集積所に続々と集まり、並べられたコンテナに要領よく資源ゴミを分別していく。分別の種類は実に24種類。資源ゴミ収集日は、週2回の生ゴミ・燃やすゴミの収集と別に設けている。
集積場所は、地域によって細かく指定されており、住民らが交代でゴミ当番を担当する。ゴミ当番は、コンテナの配置や、収集されたゴミを一カ所にまとめるなどの作業をする。また近所の中学生も手伝いにやってくる。住民にゴミの分別について聞くと「最初は戸惑った」ようだ。だが、ゴミの高度分別が開始されてから19年、今では「生ゴミと燃やすゴミを一緒に捨てることのほうが抵抗がある」と話す。
今の水俣の子どもたちは、生まれたときからこの高度分別が始まっていたので、何の疑問も抱かないそうだ。 月に1回は地域住民が交流することから”ゴミュニケーション””ゴミ端会議”という言葉も生まれた。分別されたゴミはそのほとんどがリサイクルされ、中でも酒瓶などは「リグラス」としてアーティストの手が加わり、風鈴やコップに生まれ変わる。これが水俣の名産品になりつつある。