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日本テクノ協力会・日電協の水戸グループでは、猫の語り口が特徴のオリジナル情報誌「でんでん・みと情報」を定期的に発行しており、環境市場新聞では毎号のダイジェスト版を掲載しています。最新号やバックナンバーは右のバナーからダウンロードできます。

吾輩も親方たちを支えるつもりである

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 吾輩は電気管理技術者の親方たちに飼われている猫の〝でんでん〟である。
 過日、丸まって午睡に興じていた吾輩の鼻先に、書物がどすんっと落ちてきた。俊敏な吾輩はただちに飛び退いたが、吾輩が居たその場所にも、豪雨のように次々と書物が降り注ぎ、床に積もっていく。飛び退いた先はテーブルの上だったが、そこも上下左右にがたがた動き、安定しない。再び床に着地して、揺れがおさまるまで吾輩は様子をうかがっていた。そのとき親方たちは不在で、しばらくして戻ったときには、部屋の様子にがく然としていた。
 親方たちによると、人間様は、この地震による災害を東日本大震災と名づけたようだ。それから数週間が経過し、テレビなどで復興に向かう人々の活動が紹介されるようになると、ふだんよりふさぎ気味の親方たちはこんなことを話していた。
「被災地を励まそうとする温かい行為には本当に頭が下がる」
「多くの外国人が日本から離れようとする中で、アメリカのドナルド・キーンさんっていう日本文学の研究者は、この震災を機に日本国籍を取得して、日本に永住することを決意したそうだ。長い間、驚くべき親切さで接してくれた日本人への恩返しという気持ちらしい」
「その気持ちは見習うべきだ。震災で故障した電気設備も多い。俺たちは俺たちのできることで、復旧復興の協力をしよう」
 物言いは、いつものツバキを飛ばすような乱暴な口調とは違い淡々としていた。そんな話し方ができるのかと吾輩は驚いた。いつもその話し方をしてくれれば、吾輩の安眠も保たれるものを……。だが、口調はそれでも、目はどの親方もキラキラしていた。自分たちがなんとかするという熱意なのであろう。
 輝く目を隠し持っていた親方たち。吾輩は、これからも支えていってやるよ、という気になった。