全国的な環境意識の高まりの中で、教育分野においても幼少期からの継続的な環境教育の重要性が注目されています。「日本の環境教育」では、全国各地の環境教育授業の様子をレポートします。地域の特色を活かし地元住民と協力しながら進める授業や、企業が出張して行う出前授業などユニークな取り組みを紹介します。


教材は大規模改修した校舎 豊田市立土橋小学校

教材は大規模改修した校舎

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 愛知県豊田市にある市立土橋小学校では、校舎を教材として最大限に活用した環境教育に取り組んでいる。

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学校の写真  土橋小学校では、2009年度から3年間にわたり環境省の進める「学校エコ改修と環境教育事業」のモデル校として校舎の大規模なエコ改修を実施した。この事業の特徴は、建屋を「環境に配慮した校舎」として改修するだけでなく、環境教育の教材としても活用する点。設計段階から教職員や児童が設計会社とともに計画に参加し、教材としての使い道も考慮した「ハイブリッド・エコスクール」へと改修を進めてきた。

児童のガイドがエコの仕組み解説

ダイヤ生徒が校舎のエコを紹介
 校舎を使った環境教育の一つが6年生児童による「エコガイド」だ。児童が校舎内をめぐりながら新入生や来校者に向け、校舎に取り入れられているエコな工夫と仕組みを紹介する。
エコガイドの様子。二重ガラスに触って、その効果を確認
校舎には太陽光パネルや光を遮るルーバー、風の流れを促すために屋上まで吹き抜けにした通気口(風のやぐら)、緑のカーテンが観察できる渡り廊下など、さまざまな工夫が施され、環境に配慮した校舎となっている。
 エコガイドでは、これらの工夫を児童自らが考案した実験を通してわかりやすく説明。例えば「風のやぐら」はシャボン玉を利用し風の流れを見える化。二重ガラスを使用する保健室ではドライヤーの熱を当てて二重ガラスと通常のガラスとの違いを手で触れて確認する。
 学校長の坪井富士男さんは「わかりやすく伝えるための言い回しや、実験方法など子どもたちの説明はガイドを重ねるにつれどんどん上達していきます。また新入生への説明には興味づけのためクイズ形式を取り入れるなど、相手に合わせた伝え方も考える」と話す。ガイドを通じて、伝える力(国語力)やコミュニケーション力にも磨きがかかる。また学校側も朝の会にスピーチタイムを設けるなど、ガイドとして成長をみせる児童をサポートする。

ダイヤマークトイレも立派な教材に
 エコガイドとして活動するための準備は入学と同時に始まる。1〜4年生は、自然との触れ合いや野菜の育成などを通して、自然環境への愛着や共生の心を育む。5年生になると実際に校舎を教材として、周囲の自然環境とも深く関わっている校舎の省エネについて学習していく。
カードの写真
エコスタディカード。エコ改修を担当した設計事務所や大学の協力を得て、オリジナルの学習カードを作成した
 さらに同校では環境教育の教材としてトイレに着目した。トイレは誰もが毎日利用する、最も身近な生活空間。児童は「エコスタディカード」というオリジナル教材を使って、自分たちの考えた「理想のトイレ」に点数をつける。その点数を仲間同士で比較しながら、再び快適性とエコの視点から見つめ直す。「掃除はきちんとしている?」「水を出しっぱなしにしていない?」など、使い方も考えていく。こうした学習で児童は設備とともに、使い手の意識や行動も重要だということに気がつく。その意識は快適性とエコの視点を超え、バリアフリーや災害時に必要なものなどの提案へと広がっていく。
 坪井さんはこう話す。「環境教育というと自然環境問題に特化したものなどが注目されますが、すべては私たちの生活や他の教科ともつながっていきます。エコガイドでは国語力も重要ですし、トイレの学習では子どもたち自身が福祉や防災の視点に気づいてくれた」。こうした広がりが、個性や自主性も育てるのだという。6年間の継続した学習の中で、子どもたちは多くの気づきを得て、成長していく。

こぼれ話

写真 土橋小学校に向かうため、最寄駅の名鉄三河線・土橋駅を降りると、駅前には電気自動車の貸し出しステーションが整備されていました。ここは「Ha:mo RIDE(ハーモライド)」と呼ばれる、1~2名乗りの小型電気自動車や電動アシスト自転車をレンタルできるスペースです。豊田市では、現在このシステムの実証実験中で、市内には32カ所の貸し出しステーションが設置されています。利用者は運転免許情報などを登録しておくと、どこのステーションからでも車を借りることができ、返却は別のステーションでも可能。エリアは限られていますが、通常のレンタカーと同じような使い方ができるわけです。 豊田市は2009年に環境モデル都市に選定され、低炭素社会の実現に向けてさまざまな取り組みを推進してきました。ハーモライドはまさに、くるまのまち・豊田市ならではの挑戦。

沢庵作り
今後の全国への広がりも楽しみです。