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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

首都圏大停電から学ぶ
これからの電力インフラのあり方

 2016年10月12日、電力設備の火災により東京都内で最大60万6000㎾の電力が送れなくなり、都心部を含む約58万6000戸が停電したことは記憶に新しい。埼玉県新座市の地下に設置された電力ケーブルで漏電、発火したのが原因で、埼玉県と東京の豊島区を結ぶ「城北線」と練馬区を結ぶ「北武蔵野線」と呼ばれる送電線が使えなくなり、都内11区で停電が発生した。
 国土交通省によると停電により人がエレベーターに閉じ込められる事態が51件発生。鉄道と地下鉄にも影響が出た。警視庁によると計約200カ所の信号機が一時機能しなくなり警察官が手信号で対応するなどしたという。
 影響は、都心中心部の広い範囲に及び、東京地裁、国土交通省、文部科学省など霞が関の中央省庁や警視庁まで停電する事態となり、首都圏の電力インフラの脆弱性が露見した。
 首都圏で発生した類似する過去の大規模停電としては、2006年8月に起きた事故がある。江戸川区の旧江戸川を航行していたクレーン船が、基幹系統と呼ばれる送電線を切断し、都心部と神奈川県、千葉県の一部が停電した。最大停電戸数は約139万件にのぼり、信号約1500カ所、鉄道18路線が一時停止。エレベーターの閉じ込め被害も71件あった。
 この教訓から、政府は停電が起きた場合の影響を最小限にし素早く復旧できるよう送電網の強化や復旧訓練を含む対応策を電力会社に求めていた。経済産業省によると、一部の送電線が切れても別の送電線を迂回して電気を送れるように、基幹系統を多重化することを電力会社に要求していた。そうした対策が功を奏し、今回は、大部分の地域が20分以内で停電から復帰したことは驚くべきことである。
 しかし、燃えたケーブルは設置から35年以上がたっており、また同種の古いケーブルは2012年末の時点で総延長1416㎞あり、35年以上経過しているものは7割以上に当たる1008㎞にのぼる。日本の高速道路、鉄道、トンネル、港湾、電力設備などは、高度成長期につくられたものが多く、更新、改築の時期を迎えている。順次設備更新を進めながら、設備の劣化や損傷を外部から効率よく発見できるような非破壊、非接触の点検技術の開発と適用により設備の延命化を図ることが重要である。