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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

電力インフラ強靱化の第一歩
──地域自律型グリッド
分散電源で電力会社への全面依存から脱却

 東日本大震災時の津波に起因する原子炉のメルトダウンと放射能汚染の影響は、8年たった現在に至っても解決されていない。地域住民の帰宅や原子力発電所の再稼働はままならず、放射能汚染水タンクと廃炉作業の費用が増え続ける惨状を忘れてはならない。最近では、2018年9月、西日本に上陸した台風21号が日本列島を縦断した。近畿・東海地方を中心に暴風雨の影響で電力設備が被害を受け、中部電力エリアで延べ約85万戸、関西電力エリアで延べ約220万戸と、阪神・淡路大震災による延べ約260万戸にもまさる規模の停電となった。また同月下旬には強い風雨を伴う台風24号が日本列島を縦断し、全国で延べ465万5000戸の停電が発生するなど平成以降の30年間で過去最大規模の被害となった。地震による大停電もあった。同じ9月、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震の影響で、北海道電力の主力電源である苫東厚真発電所が緊急停止。最終的には、離島を除く北海道全域で約295万戸が停電に陥った。
 このような事態に対応できる電力インフラを確保するため、総合的な政策が展開されつつある。国内エネルギー供給網の強靱化推進である。2013年12月に公布された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」を踏まえた「国土強靱化基本計画」や「国土強靱化アクションプラン」がその指針となる。
 国土強靱化基本計画では、電力システムの強靭化に関して、コージェネレーション、燃料電池、再生可能エネルギー(再エネ)、水素エネルギーなどの地域における自立・分散型エネルギーの導入促進と、農山漁村にあるバイオマス、水、土地などの資源を活用した再エネ導入の必要性が示されている。第5次エネルギー基本計画でも、国内エネルギー供給網の強靱化策として、危機時における需要サイドの対応力を高めるための分散型エネルギーシステムの構築を進めるとした。
 具体的には、これらの指針に呼応し、自治体、新電力、市民団体などが主体となり、災害時の電力供給も可能な地域自律型グリッドの構築が進められていくだろう。これまでの電力会社への全面依存から脱却し、よりしなやかなシステムへ移行するのが、強靭化の第一ステップとなる。