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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

再エネ導入拡大における課題の克服
需給調整市場/デマンドレスポンス/アグリゲーター/仮想発電所

 経済産業省は2019年度の再生可能エネルギー(再エネ)固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り総額の想定が3兆5833億円になると発表した。負担増が問題視されているその金額の大きさからも、日本の再エネ導入は相当なペースで進んでいることがわかる。
 再エネは温暖化対策の主力になるためその拡大は望ましい。だが一方で課題も多い。最も大きいのは需給バランス調整の問題だ。発電量と需要量の一致が原則の電力システムにとって、天候など自然条件に左右される再エネは難物といえる存在である。
 そこで需給バランス調整の課題を乗り越えるための施策が各方面で進められている。
 その1つに、電力の取引市場を利用するものがある。現在、周波数制御や需給バランス調整に関しては、大手電力会社(一般送配電事業者)が行うことになっている。大手電力会社は、必要な調整力を調達するにあたり、コスト負担が強いられ、特定電源への優遇が不可避になる場面も想定される。そこで、公募調達の実施方法などを定めた「一般送配電事業者が行う調整力の公募調達に係る考え方」に従い、調整力の公募が実施された。さらに、それをより柔軟な調達の場にするため「需給調整市場」が創設される運びになった。この市場は、2021年に開始される見込みである。
 発電側ではなく需要側でバランスをとる調整方法にも期待が寄せられる。「デマンドレスポンス(需要応答)」である。電力供給の逼迫時に電力価格の変更やリベート(調整協力報酬)などのインセンティブにより需要を減少させる仕組みだ。
 そのデマンドレスポンスも利用しながら、需給バランスの調整をビジネスとして行うのが「アグリゲーター」である。需要家側に設置されている分散エネルギー源やエネルギー貯蔵、マネジメント機能などを活用し、それら多数の需要家を束ねて効率化を図ることで、電力バランスを調整していく。
 「仮想発電所(VPP:バーチャルパワープラント)」は、需要家側の再エネや蓄電池などのリソースを統合して制御し、あたかも1つの発電所のように機能させるシステム。当然そこには需給バランス調整の仕組みも備わっている。
 再エネ導入拡大に横たわる課題は、多様な分野の多彩な取り組みによって解消されていくだろう。