防災対策としての地域マイクログリッド
2018年9月、北海道電力の最大火力発電所である苫東厚真火力発電所(計165万kW)が地震で止まり、供給力の半分以上が喪失した。需給バランスの崩れは、ほかの発電所にも影響が及び、道内全域が停電に追い込まれたのは、記憶に新しい。このブラックアウト(全域停電)の際、経済産業省が太陽光発電システムには自立運転機能があり、それをオンにするとスマートフォンやパソコンの充電、テレビでの情報収集ができることなどを示した。
2019年9月には台風15号が千葉市付近に上陸し、その影響で東京電力管内の約93万戸が停電した。台風襲来から1週間が経過した時点でも、依然として約9万8000戸で停電が続き、市民生活に甚大な影響が出た。東日本大震災のとき東電管内で全面復旧に要した日数は9日間だった。比較すれば、この台風による被害規模がどれだけ大きいかがわかる。
ところがこの台風の襲来時、千葉県長生郡睦沢町と地元企業が設立した新電力のCHIBAむつざわエナジーでは、町内や周辺市町村が停電したにもかかわらず「道の駅むつざわつどいの郷」や周辺の町営住宅団地に電力供給を継続していたことが明らかになった。道の駅むつざわは、国の重点道の駅に選定されていて広域の災害に対し防災拠点としての機能を担うことになっていた。
一帯は地域マイクログリッドと呼ばれる電力供給網が敷かれている。このようなインフラ構築を支援する事業は、2018年から資源エネルギー庁も打ち出している。災害時にも地域の再生可能エネルギー(再エネ)など自立的な電源を活用できるようにする。そのために蓄電池など調整力を付加する配電網だ。
自然災害に対する備えとしては、「国土強靱化アクションプラン2017」に基づく国内エネルギー供給拠点の強靱化が進められている。電力システムに関しては、国土強靱化基本計画で、コージェネレーション、燃料電池、再エネ、水素エネルギーなどの地域における自立・分散型エネルギーの導入促進と、農山漁村にあるバイオマス、水、土地などの資源を活用した再エネ導入の必要性が明記されている。
電力会社への全面依存から脱却し、自治体、新電力、市民団体などが主体となり、地域エネルギーの活用で災害時にも電力供給可能な地域自律型マイクログリッドを構築すること。それが強靭化の第1ステップとなる。