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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

事業運営をすべて再エネで
「RE100」の挑戦と課題

 世界的に再生可能エネルギー(再エネ)は、導入拡大に伴い発電コストが低減しコスト競争力のある電源になりつつある。日本では、2012年7月の再エネ固定価格買取制度(FIT)導入以降、年率26%で伸び、2017年3月末時点で約5600万kWに達した。しかしながら、発電コストは国際水準と比較して依然高い状況にあり、国民負担の増大をもたらしている。また再エネ導入拡大が進む中、系統制約が顕在化しているほか、出力変動の調整力確保も含め電力系統への受け入れコストも増大している。さらに地域との共生や、小規模電源を中心とした将来的な再投資の停滞(発電事業終了後に設備廃棄)も懸念されている。
 それでも再エネを主力電源にしていくことは世界の潮流である。現在、事業運営を100%再エネで調達することを目標に掲げる企業の団体として「Renewable Energy100%(RE100)」がある。日本の加盟企業は、2040年ないし2050年に最終的な目標として再エネ100%とする場合と、2030年あたりを第1期の目標として30〜50%を掲げ、先の最終目標を第2期にする場合とに分かれている。日本企業の目標達成年は他国の企業に比べ先送りにしている印象を受けるが、これには、まず参入をアピールし、実際の導入は時間をかけてゆっくり行いたいという意思がうかがわれる。
 目標達成意欲の高い事業者の具体的な活動には、静岡県御殿場市の環境事業開発センターで1100MW時の太陽光パネルを導入しマイクロ水力発電の実用化や木質バイオマスエネルギーボイラーの導入なども行うリコー、100%再エネの購入プランで電力を調達するアスクル、ブロックチェーン技術で発電所が特定された再エネ電力を購入する丸井グループなどがある。その一方で、自社グループの工場屋根に太陽光パネルを設置するだけに留まる企業も少なくなく、温度差があるのが現状である。要因には、再エネ価値が付加された電力をどこが扱っているかわからないというアクセスの不整備、価格が不透明であることへの不信感、目先の経済的合理性だけを求める姿勢などが考えられる。
 それでも、産業用FIT電源が2032年以降、順次買い取り期間が満了するため、この卒FITの産業用電源と直接契約を結ぶことでRE100企業の再エネ導入率向上は期待できる。