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Eco Story 環境活動を推進する企業の物語
#22/株式会社トンボ

商標は豊かな自然のシンボル

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 桜咲く春。入学シーズンを迎えると、真新しい制服に身を包み、晴れやかな表情をうかべた新入生を多く見かける。今回紹介する株式会社トンボは、長年にわたって学校の制服を中心とした衣料品の製造販売を行ってきた企業だ。創業の歴史は古く、1876年に綿花栽培の盛んだった岡山で、足袋製造から事業をスタートした。その縫製技術を生かし、1930年に機能性とデザインを両立させた学生服の生産・販売を開始する。現在のトンボ学生服の第一歩であり、その頃より「トンボ」が商標として使用され始めた。
 日本最古の歴史書「古事記」では日本のことを「秋あ きつしま津洲」と表記している。「秋津」とはトンボの古い呼び名で、日本に数多くのトンボが生息していたことの表れだ。トンボは日本を象徴し、そして子どもに親しまれている。日本の発展を祈る心と、子どもに自社の商品を着てもらいたいという思いを込めて、同社の商標となった。

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半世紀放置された森の再生活動も

 生態系からみても、環境のよい場所に多く生息するトンボは、豊かな自然のシンボルともいえる。同社は環境の大切さを広く伝えるために、創業110周年記念事業として1986年に「WE LOVE トンボ」絵画コンクールに協賛。32回となった2017年度は全国各地から14万点以上の応募があった。豊かな自然のシンボルであるトンボを観察し、描くことで、子どもたちが自然と生き物の大切さに気づき、自然を守る心が生まれればーー。その思いに多くの学校関係者をはじめ省庁や各団体が賛同する。

絵画コンクールの最終審査会の様子
「WE LOVE トンボ」絵画コンクールの最終審査会の様子


同絵画コンクール表彰式
同絵画コンクール表彰式の記念写真

 豊かな自然を実現するため2012年にスタートしたのが「真庭トンボの森づくり活動」だ。活動拠点となるのは、岡山県真庭市の自然公園に隣接する約2ヘクタールの森。約50年放置された森は、活動前は暗くて一面に笹がおい茂るほど荒れていたが、社員とその家族のほか、地元市民の協力により徐々に整備された。過去5年間の活動で薄暗かった森に光が差し込むようになり、多様な動植物が共生する場所へと変わりつつある。

「真庭トンボの森づくり活動」の様子
「真庭トンボの森づくり活動」の様子

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 企業規模の拡大とともに、社会的使命や責任が大きくなる中で、京都議定書が採択された1997年から、業界に先駆けてエコ商品の開発と環境経営に取り組んだ。循環型社会の実現が求められる中、回収したPETボトルからできた再生繊維を使い、学生服やセーラー服、シャツ、体育着などの製造に生かしている。PETボトルから生まれる再生素材は、もともとポリエステル繊維と同じ組成の物質であり、耐久性に優れているのが特長だ。
 株式会社トンボは豊かな自然のシンボル「トンボ」を旗印として、地球環境の保全が最重要課題の1つであることを社員全員が自覚している。次世代に向けてトンボが雄飛する豊かで住みよい循環型社会の実現を目指し、今後も社会に貢献していく。

こぼれ話 こぼれ話

株式会社トンボには、ユニフォーム研究開発センターがあり、そこには制服の歴史が学べるユニフォームミュージアムがあります。文化の節目にあわせた制服の変化を追っており、絵巻物や文献などをもとに過去のスタイルを復元。当時の学生の体格や髪型などを再現したマネキンに着付けています。また、英国を中心とした世界のユニフォームも展示し、幅広い知識を学ぶことができます。見学は基本的に学校・流通関係の団体のみとなっていますが、同社ホームページの「デジタルミュージアム」でも気軽に閲覧することが可能です。