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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

老朽化インフラの延命に資する
設備保全分野の新たな技術

 2016年10月12日に東京都内で発生した大規模停電は、埼玉県新座市内にある送電線などのメンテナンスを行うと呼ばれる地下施設で起きた火災に起因し、延べ58万6800戸が停電した。燃えた送電ケーブルは、敷設から約35年が経過していたことから、設備の老朽化が原因と考えられる。
 電力設備をはじめとする日本の社会インフラは、1960年代の東京五輪期から70年代の高度成長期、80年代のバブル経済期、そして90年代のバブル後の不況時の景気対策期において建設されている。これらの多くは現在、更新を待つ膨大な老朽化インフラになっている。
 多くの社会インフラの老朽化が同時に進む中、維持保全業務の効率化は必要不可欠だ。そこで、保全業務にはどのような種類や方法があるのか簡単に振り返っておく。
 従来から多く採用されてきたのは、「時間基準保全(TBM)」である。定期的に点検・保守を行う方法だが、設備の故障予知が難しく、不良や故障に陥りやすいという問題があった。
 そこで最近では、「状態基準保全(CBM)」の方法が取り入れられるようになってきた。設備の状態を監視しながら、その状態に応じた点検・保守を行うやり方だ。設備の使用前・使用中の動作状態の確認、劣化傾向の検出、故障や欠陥の箇所の確認、故障に至る経過の記録などの目的で計測や監視を続け、もし異常の兆候がみつかれば、修理や部品交換などを行う保全方式である。
 さらに航空業界などでは「信頼性中心保全(RCM)」と呼ばれる方式も採用されている。これは、TBMやCBMまたは「事後保全」といった何種類かある方法のうち1つを統一的に用いるのではなく、対象になる設備に応じて、適切な保全方法を選び、変えていくやり方である。保全方法の選択に際しては、その設備の設計あるいは運用段階でリスクを分析し、統計に基づいて信頼性を評価する。その信頼性に応じて保全方法を選択するのである。リスク分析の手法としては、電力設備や道路・橋などの社会インフラ、製油所などの大規模プラントに数千~数万のセンサーを取り付け、振動、温度、発生音などのデータを集め、異常データ検出時に、どのような故障の予兆があるか知らせる技術などがある。
 新規設備の建設が困難な中、最先端技術であるIoT(身の周りのあらゆるモノにセンサーが組み込まれ相互が通信できる仕組み)を駆使して、設備の異常を予知・保全し、社会インフラの延命化を図ることが重要課題である。