
太陽熱、地中熱、雪氷熱……
活用すべき未利用熱源の再エネ

地球温暖化対策や化石燃料依存からの脱却などの諸問題を解決する切り札として着目されている再生可能エネルギー。よく耳にするのは、太陽光や風力だろう。だが、再エネはその2種だけではない。再生可能なエネルギーを得る方法は、ほかにも多数あり、中でも熱源を利用する再エネは、そのポテンシャルにもかかわらず、活用が進んでいない。我々の周りには多様な未利用熱源が存在し、その力を生かせていないのだ。本稿では、利用促進が急がれる主な熱利用の再エネについて、その概要を紹介する。
①太陽熱 太陽の熱で温水や温風をつくり、給湯や冷暖房に利用する方法。集熱器で太陽のエネルギーを集めるもので、水式集熱器と空気式集熱器の2種がある。10〜15年で投資が回収できるといわれ、その期間は太陽光発電との比較でもそれほど遜色はない。
②地中熱 一定温度の地中と四季で変化する地表の温度差に着目した利用法。冬場は、地中から熱をすくい上げ暖房に、夏場は地上の熱を地中に放出し冷房に使うシステム。ランニングコストは低いが、初期コスト(掘削や機器設置など)が比較的高い。投資回収期間は十数年といわれる。
③雪氷熱 冬期の雪や氷を断熱性が高い貯蔵庫に貯め、その冷熱エネルギーを利用してつくった冷水で冷房などを行う。課題は貯蔵庫が高価なこと、設置スペースが必要なこと。だが積雪寒冷地では大量に存在する雪や氷の有効利用ができ、クリーンな熱源になる。
④温泉熱 入浴などで温泉を利用するとき、排出される熱を利用する方法。高温の源泉の湯を入浴適温にするときの排熱、利用後の排湯をさまして放出するときの排熱が、それぞれ利用できる。それらの熱を熱交換器で回収し、暖房や給湯に役立てる。日本には、源泉が2万7214カ所、温泉を所有している市町村は1477ある(環境省2015年度温泉利用状況調査)。温泉熱利用の普及を促進することで広範な地域への波及効果が見込める。
⑤海水熱 海水をヒートポンプの熱源水や冷却水として利用する方法。名古屋港水族館のプールでこの方法が採用され、高い省エネルギー性、環境保全性などがあると確認されている。
その他、河川、下水、地下水などの水温と大気温の差を活用する方法もある。これは年間を通じて安定的に温度差エネルギーが得られる。
政府は再生可能エネルギーの大幅な導入増を見込んでいるが、その目標達成のためにも忘れられがちな未利用熱の活用を再認識する必要がある。

- v63_2021Winter
再生可能エネルギー大量導入時にスマートインバータが果たす役割 - v62_2020Autumn
自然災害が多発する状況下──地域マイクログリッドの意義と自立的需給運用 - v61_2020Summer
究極のクリーンエネルギー「水素」 製造・貯蔵・利用への期待 - v60_2020Spring
事業運営をすべて再エネで「RE100」の挑戦と課題 - v59_2020Winter
防災対策としての地域マイクログリッド - v58_2019Autumn
卸電力市場の価格決定メカニズムと今後の課題 - v57_2019Summer
再エネ導入拡大における課題の克服 - v56_2019Spring
電力インフラ強靱化の第一歩──地域自律型グリッド - v55_2019Winter
再エネ大量導入時代の電力貯蔵技術の役割 - v54_2018Autumn
再エネの弱点を補完、普及を後押し - v53_2018Summer
次期エネルギー基本計画の行方
危うい要素、内包の可能性 - v52_2018Spring
揚水発電所の新たな価値
再エネ大量導入時代に向けた役割 - v51_2018Winter
実現可能――電力網の国際連系
動き出したスーパーグリッド - v50_2017Autumn
近未来の電力システムを支える次世代エネルギーインフラ - v49_2017Summer
太陽熱、地中熱、雪氷熱……活用すべき未利用熱源の再エネ - v48_2017Spring
老朽化インフラの延命に資する設備保全分野の新たな技術 - v47_2017Winter
首都圏大停電から学ぶ これからの電力インフラのあり方 - v46_2016Autumn
電力市場に広がる新たなビジネス形態
節電取引、仮想発電所、セット販売…… - v45_2016Summer
再エネ大量導入を可能にする仮想発電所への期待 - v44_2016Spring
電力に続くガス小売り全面自由化 - v43_2016Winter
電力設備の補修もスマート化へ - v42_2015Autumn
削減目標の実現に不可欠なもの - v41_2015Summer
期する地域密着のエネルギーサービス - v40_2015Spring
再生可能エネルギー特措法省令を動かした
福島県からの緊急提言10箇条 - v39_2015Winter
再生可能エネルギーの導入拡大へ
早期の「足止め」解消を期待 - v38_2014Autumn
パッケージ型インフラ海外展開
広がるスマートコミュニティーへの期待 - v37_2014Summer
電力の安定供給、価格低減、
安全性確保の協調を求めて - v36_2014Spring
豊富な水資源を有効活用する中小水力発電への期待 - v35_2014Winter
スマートに電力需要抑制を実現するデマンドレスポンス