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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

近未来の電力システムを支える
次世代エネルギーインフラ

 日本最初の電力会社は1883年設立の東京電燈、後の東京電力である。以来約130年で日本の電力会社は大規模電力システムを築き上げた。黎明期の水力発電開発、その開発地点の枯渇に伴う石油火力への移行、やがて発生した石油危機への対応による原子力や天然ガスへのシフト。さらにスケールメリットを求めて100万kW超の大規模発電施設が建設され、50万Vの超高圧で需要地に送電するという盤石で巨大なシステムができていった。
 しかし2011年3月、想定外の自然災害に直面する。大規模電力システムの脆弱性が露見。同時期に市場の自由化が進められ、電気事業は大きな転換を余儀なくされる。そんな中で一時注目されたのが、スマートメーターを設置して需給調整に役立てるなどのスマートグリッド(賢い電力網)だった。だがこれは電力会社にとって、投資に対し電力の販売額が減少するというジレンマがあり、未完成のままだ。再生可能エネルギーを地産地消で活用するマイクログリッドも試作されたが、コストやバックアップ電源などの問題で普及には至っていない。
 そこで今、電力会社と消費者の双方に有益な次世代電力グリッドとして期待されるのが、①スマートシティ②クラスター型グリッド③スーパーグリッド――という3つの潮流である。
 ①のスマートシティが目指すのは、電力網の改変に加え、熱の有効利用、交通システムの効率化、ライフスタイルの快適化など社会インフラ全般の高度化だ。エネルギー管理システム(EMS)を通じ、エネルギー利用の最適化と同時に高齢者の見守りなど他の生活支援サービスも実現できる。
 ②のクラスター型グリッドは、大規模ネットワークを一挙に構築するのではなく、地域特性に合う適正規模の電力グリッド(クラスター) をつくり、相互に連結しながら規模を拡張し、電力の安定供給を目指すもの。自治体、災害復興地域、途上国の過疎地、離島や無電化地域などでの送電システムの構築に適している。
 そして、電力の国際連系網を使うのが、③のスーパーグリッド。東京から3000km離れたモンゴル砂漠地帯で風力発電した電力を日本へ送るアジアスーパーグリッド構想がすでに動き出している。アジア各国のグリッドを結び、偏在する再生可能エネルギーを国際連系網を通して有効活用する壮大な事業だ。東アジアには政治体制が異なる国や紛争を抱えた国もあるが、経済協力のメリットをインセンティブとして共有し、政治的合意さえ得られれば、実現するのにそれほど多くの時間はかからないだろう。