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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

次期エネルギー基本計画の行方
危うい要素、内包の可能性

 政府は現在、3年ごとに改訂する「エネルギー基本計画」の見直しを進め、今夏の閣議決定を目指している。そこでは2030年度に目標とする電源構成が示される見通しである。比率は、従来の目標値を踏襲したまま、再生可能エネルギー(再エネ)=22〜24%、火力発電=56%、原子力発電=20〜22%の大枠を維持する方針が明らかにされている。
 原発に関してみると2018年1月に提出された経済産業省の資料によれば、日本の原発は東日本大震災前に57基あり一旦すべてが停止。現稼働中は5基で、老朽化などで14基の廃炉が決定し、19基は適合性審査未申請で稼働の見通しがない。政府は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、原子力発電所の運転期間を原則40年と定めているが、このルールを現存の原子力発電所に厳格に適用すると2031年に設備容量が現在の半分に、2038年で同2割を下回り、2064年にはゼロになる(経産省試算)。すなわち、電源比率の目標達成は不可能で、40年ルールの変更が必要になるという矛盾を抱えている。
 また次期基本計画には、経産省による専門家会合「エネルギー情勢懇談会」が2018年4月に発表した「提言〜エネルギー転換へのイニシアチブ〜」の内容が加味される。この中で提案されたのが新たなコスト検証法、再エネと蓄電池を組み合わせるなどの方法論である。現状、原発は1kW時当たり10.1円程度、太陽光発電は同24.2円と試算されている。太陽光や風力が2030年度の目標である同7円まで低減できたとすれば、原発より安価になる計算だ。だが「提言」は再エネのコストを、蓄電池を組み合わせた全体単価として同69円と試算した。その一方で、原発の今後のコスト算定方法などは明らかにしていない。
 再エネ拡大のために重要な送配電網についても記述は消極的だ。各国に広がり出した国際送電網は「国際連系線を活用した再生可能エネルギー拡大という戦略は、日本にとって様々な課題」があるとした。これに関しては、過去の本稿でも示したとおり民間レベルでの検討が行われ、実施可能と判断されている。
 決定されるエネルギー基本計画が、原発や石炭火力に固執する一部産業界の意向だけを優遇するものになるのなら、その実現は危うくなっていくだろう。  

横山隆一・早稲田大学理工学術院 環境・電力システム研究室 教授。電力技術懇談会会長。環境・エネルギー・電力システムの市場分析に特化。再生可能エネルギーやスマートグリッドに代表される環境・エネルギーシステム研究の第一人者。
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