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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

再エネの弱点を補完、普及を後押し
VPP/揚水発電/地域自律型グリッド

 政府は新しいエネルギー基本計画を発表した。だが、そこに示す2030年の原発比率の目標達成は難しい。現存の全原子力発電所の運転年数を延長し、60年間運転しても徐々に廃炉は進むからだ。また、石炭火力の目標も、欧米の金融機関が投融資しない方針を明らかにしていることから、その達成は厳しい。
 すなわち、原発と石炭火力の不足分は、非化石燃料である再生可能エネルギー(再エネ)によって賄うことになる。だが再エネは天候など自然条件により出力が変動するため、電力系統の需給バランスが崩れ、運用に支障をきたす懸念がある。この問題を解決する手段として期待されているのが、仮想発電所(VPP)、揚水発電、地域自律型グリッドの3つの新技術である。
 VPPは、分散しているエネルギー源を集約し、仮想的にひとまとまりの発電所のように機能させる技術。家庭や工場などが保有する太陽光発電といった個々の分散型のエネルギー源は小規模なものだが、これをIoTの活用による高度なエネルギー管理技術で集約し、遠隔制御する。電力の需給バランス調整に活用することができ、負荷平準化や再エネから生じる出力変動の吸収に役立つ。
 2つ目の揚水発電は発電設備の利用率が低い夜間に下側のダムの水をポンプで汲み上げ上側のダム(貯水池)に貯め、需要がピークとなる昼間に貯水を用いて発電するもの。この揚水発電が再エネの出力変動を吸収する用途で活用され始めている。ヨーロッパや中国では発電と揚水を同時に行える水力発電所を新設し、再エネを補うのが主流になりつつあり、日本でも再エネの増加が著しい九州電力などがこの方式での活用を開始している。
 3つ目の地域自律型グリッドの「グリッド」とは送電網や電力網を意味する。文字通り地域特性に合わせた適正規模の電力網を示す。従来のように大規模広域に送電線を張り巡らすのではなく、地域需要に見合うだけの分散型エネルギー源(できるだけ再エネを使う)を導入し、地域内の需給バランスを自律型のエネルギー管理システム(EMS)で制御するものだ。これにより、電力会社が嫌う系統への電力流出(逆潮流)が回避できると同時に、再エネ利用率の向上にも資する。また商用系統に全面依存してきた電力供給形態からの脱却も可能になる。  

横山隆一・早稲田大学理工学術院 環境・電力システム研究室 教授。電力技術懇談会会長。環境・エネルギー・電力システムの市場分析に特化。再生可能エネルギーやスマートグリッドに代表される環境・エネルギーシステム研究の第一人者。
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