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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

再生可能エネルギー特措法省令を動かした
福島県からの緊急提言10箇条

 四国電力、東北電力、北海道電力は2014年9月30日、相次いで再生可能エネルギー発電設備に対する契約申し込みを保留すると発表し、世間を驚かせた。特に福島県は、復興を成し遂げるため、再生可能エネルギーの飛躍的推進を施策の大きな柱と位置づけてきただけに、この連系回答保留には強く反発した。
 事態を受けた福島県は即座に専門部会を設置し「再生可能エネルギーの接続回答保留に関する福島からの緊急提言〜再生可能エネルギーのさらなる導入と福島の復興・再生に向けて〜」を作成。これを「ふくしま提言10箇条」として2014年11月末、宮沢洋一経済産業相および東北電力の海輪誠社長へ提出した。
 ここではまず、解決に向けた基本的考え方として「再生可能エネルギー最大限導入の政府方針の堅持」「再エネ発電量の現実の増加速度に応じた対策の実施」の2提言を示した。
 続く3提言を短期的対策としてくくり「空押さえ対策・後発事業受入円滑化と回答保留の即時解除」「電力系統接続状況の情報公開と自治体関与の仕組みづくり」「小水力・地熱・バイオマス発電の受入容量の確保」を要望。この短期的対策は主に、問題の背景にある空押さえへの対処からきている。現在、東北電力管内の太陽光発電未着工分は94%もあり、これが新規事業を妨げているからだ。空押さえは買取価格と送電網接続権利を確保しながら発電事業に着手しない案件である。
 次の3提言は中長期的対策で「再エネ最大限導入を実現する接続可能量の継続的見直し」「地域間連系線の活用など電力の広域的運用の強化」「新たな需給調整システムの構築と再エネ優先給電の徹底」をあげた。残る2提言は、福島の復興再生に向けた特別対策とし、「地域的な送電網接続問題に関する特別対策の実施」「再エネ大量導入を実現する次世代マイクログリッドの構築」を盛り込んだ。
 これを受けた経済産業省は審議会での議論を経て2015年1月26日、再エネ特措法省令を改正施行。東北電力の接続回答は再開された。
 また福島向け特別対策として、再エネ発電・蓄電・送電設備への補助(被災3県20億円、福島避難地域92億円)、東北電力系統設置の蓄電池導入(117億円)、東北電力の優先接続枠の設定、東電の新福島変電所の東電負担(30億円程度)での改修などが実施される運びとなった。さらに全国向けにも、蓄電池や出力制御実証などの事業が予算化された。
 福島発の提言が問題解決の流れを導いている。