エコニュースWebマガジン > 環境市場新聞 > 環境政策最前線
電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

究極のクリーンエネルギー「水素」
製造・貯蔵・利用への期待

 化石燃料に代わる次世代クリーンエネルギーとして「水素」が注目されている。水素は、地球上に最も多く存在する元素で、燃焼させても水になるだけで環境負荷が少なく、さまざまな原料から製造できるため、エネルギーセキュリティの面からも早期商用化が期待されている。その利用方法の1つに燃料電池がある。世界的規模で研究開発が行われているが、中でもリードしているのは日本で、燃料電池自動車・水素インフラの一般への普及を目指した実証試験が行われてきた。
 2014年6月には産学官の有識者検討会議である水素・燃料電池戦略協議会で「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が策定された。そこでは、水素利用の飛躍的拡大、水素発電の本格導入と大規模な水素供給システムの確立、CO2フリー水素供給システムの確立という3つのフェーズで水素社会の実現を目指すとした。2016年3月の改訂では、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車(FCV)、水素ステーションにかかわる自立化の道筋や定量目標なども盛り込まれた。
 2017年4月には、第1回「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」を開催し、再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大や水素社会の実現について議論を行い「未来投資戦略2017」が公表された。さらに各国政府の関心も高まっており、2018年10月には閣僚レベルが参加する「水素閣僚会議」が開催された。そこで発せられた東京宣言では、水素が今後のエネルギー環境対策にとって重要であることが再認識されている。
 今後の再エネ拡大にとっても、それを用いたR水素システム(RenewableHydrogen)は必須になると見られ、バッテリーとともに電力貯蔵(下げ電力調整)システムとして商用規模での運用を目的に、世界的に実証が進んでいる。商用化には、大型の水素発生装置や低コストの再エネ調達に加え、水素環境価値の流通など制度設計も必要だ。
 日本の削減目標(2030年度に2013年度比で26%減)の実現にはシェア8割以上を占めるエネルギー起源CO2の対策が必須で、ゼロエミッション電源の最大化が重要な国家戦略になる。原発もゼロエミッションだが再稼働に不透明感があり、長期的には再エネ比率が増していくだろう。需給調整力の脱炭素化を目的に水素が活用できれば、水素ビジネスの発展はさらに期待が持てる。