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電力需要逼迫と価格高騰、温暖化対策が喫緊の課題となってる昨今。再生可能エネルギーの利用、それを有効活用するための地域エネルギー供給システムの構築について、早稲田大学理工学術院の横山隆一教授がわかりやすく解説します。

削減目標の実現に不可欠なもの

 本年末パリで開かれる国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に先立って、各国には2020年以降の温室効果ガス削減目標を含む約束草案の提出が求められていた。これを受け日本は、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する目標を決めた。
 前提となる2030年の電源構成は発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない原子力と再生エネルギーの合計が44%、天然ガス火力が27%、石炭火力が26%、石油火力が3%。これらによりエネルギー起源のCO2排出量は2013年比で20%程度の削減になり、加えて森林によるCO2の吸収や代替フロン対策などの積み上げで目標を達成するとしている。
 ここで懸念されるのが20%を超える再生可能エネルギーの大量導入である。再生可能エネルギーは他の電源と違い、気候、天候によって発電出力が大きく変動する。これが電力系統の周波数変動、電圧変動、送配電線の潮流変動などを引き起こし、電力の安定供給を悪化させる恐れがあるからだ。
 その対策として日本では、スマートコミュニティー、エコシティー、コンパクトタウンなどと呼ばれる新たな電力供給形態が模索されてきた。これらは特定地域に導入される分散型電源や需要家機器を協調制御することで、出力変動の影響を最小化させたり、事故時に自立運転を行って地域系統の安定供給を向上させる方式である。
 同時に再生可能エネルギーの出力変動を吸収するため、需要家側のエネルギーマネージメント技術の開発も進んでいる。需要家の設備を制御し、変動吸収とともに省エネルギーにも貢献する技術で、系統情報・気象情報・電力価格情報に基づく制御を目的としている。
 これらを達成するための主要要素には、情報通信技術、蓄電池、デマンドレスポンス(需要家応答)、EMS(エネルギー管理システム)がある。特にEMSは統括的な電力制御のために重要で、対象となる地域や施設内の電化製品、給湯器、太陽光発電、燃料電池、空調システム、さらには電動車両などをネットワークで制御するシステムである。なおEMSは、地域(Community)に適用するならCEMS(セムス)、住宅(Home)ならHEMS(ヘムス)、ビル(Building)はBEMS(ベムス)、工場(Factory)はFEMS(フェムス)と呼ばれている。
 削減目標の実現に向けた再生可能エネルギーの大量導入には、こうした地域型の新しい電力供給形態や精緻なエネルギー管理技術の実用化が不可欠である。