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エピソード環境市場新聞創刊時から連載する人気コラム。企業活性化教育研究所の長尾光雄所長が、企業研修時に経験した「自利利他」にまつわるエピソードを紹介します。

#46
自利利他 じりりた -4-

人を動かすものは相手を中心に考える心

 14年くらい前のことだ。営業開始前の朝礼を、公開して話題になった飲食店があった。うたい文句は「日本一の朝礼」。誘われて私も見学に行った。私が想像していたよりもインパクトがなかった。そこで「一度、私の研修を見学しませんか」と提案。そのとき店長は不在。後日、大嶋啓介店長(当時29歳)が私の研修を見学に来た。その折に「自分も訓練に参加してみたい。どのような訓練がいいか」と相談された。私は13日間の合宿訓練を勧めた。
 話の中で意外なことを聞いた。彼は3カ月後に会社を辞め独立する予定だという。社長の了解も得ている。それなのに朝礼の質を高めるには参加したほうがいいと思ったのだ。社長に話をしてみると言っていた。「3カ月後に退職、13日間に及ぶ合宿訓練、31万円以上の訓練費用」。私は、社長が彼の訓練参加を認めないだろうと思った。
 翌月。大嶋さんが再び見学に来て「参加してきました」と報告した。彼の実行力とそれを認めた社長にも驚いた。続けて「ぜひあの訓練のような体験を他の店長にも体験させたい。私は店長たちを指導する立場にある。どうすればいいか」と相談してきた。まもなく会社を退職する人が、その会社の店長たちを心配する。これは利他の心だ。自分よりもまず他人のために役立つことを考える心。公開朝礼もその心から生まれたのだろう。朝礼の見学者に喜ばれ、会社の認知度も上がる。見られることでスタッフの意識が変わる。自利利他だ。社長はそんな大嶋さんの心がわかっていたから、訓練参加を了承したのだろうと思った。
 その後、大嶋さんは独立。居酒屋「てっぺん」を創業。てっぺん独自の公開朝礼は年間1万人も見学に訪れるほど人気。また業界活性化のため全国1000店以上がエントリーする「居酒屋甲子園」を立ち上げたり、若者の独立を無償でバックアップ。現在42歳。自分よりまず他人のために役立つことを考える人だ。

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