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「豊かな生活と環境」への期待の高まりを背景に日本らしさ・地域らしさを推進する運動が活況を呈しています。「環境知識」では気候変動・生物多様性の話から注目の政策、地産地消運動まで幅広く取り上げ、そのポイントをわかりやすい解説も交えてお届けします。

求められる電力供給と窮状を救う知恵

 今年4月、経済産業省の電力需給検証小委員会で、2012年度の電力分野の温室効果ガス排出量は2010年度比で約1億1200万㌧増加したと報告された。これは約3割の増加に相当する。
 増加の原因は原子力発電所の稼働停止で、火力依存度が東日本大震災前の約6割から約9割に高まったこと。その火力発電所には、エネルギー効率や環境性能の劣る旧式の施設も多い。寿命とされる40年を超えた老朽火力設備だ。
 老朽火力の設備容量は震災前の2010年度と比較して、2013年度は約2倍(1165万㌔㍗から2479万㌔㍗)に増加。特に石油火力の老朽設備は190万㌔㍗から1145万㌔㍗と約6倍にもなっている。燃料を高温で燃やし続ける火力発電は傷みやすいうえ、稼働には熟練の技術が必要である。現場への大きな負担と潜在的リスクを抱えたまま高稼働が強いられている状況だ。維持管理費の増加といったコスト面の影響も大きい。
 燃料費については、原子力をベースロード電源として利用していた震災前(2008~2010年度の平均)に比べ、2013年度は約3・6兆円増加(単純に人口で割ると、国民一人当たり3万円強の負担増加)したと試算されている。
 こうした中、国内の航空宇宙関連や医療機器、自動車メーカーなどでは、長年培った技術と革新的な技術の融合といった今までにない発想の転換で、省エネ性能の高い新しい産業のカタチを切り開く挑戦が進められている。例えば製造分野で大量の電力を消費する鋳造の工程を、特殊な3Dプリンターでの作業に置き換える技術。金属粉末を溶かして形をつくり、小さな部品であれば鋳造で1週間程かかる作業を24時間程度でこなすという。当然、電力消費量も格段に下がるだろう。技術革新が省エネにつながり、さらには産業構造の転換にもつながっていくようだ。
 エネルギー政策の方向性がどのように進むにしろ、基幹インフラである電力の問題を解決する知恵と新たなイノベーションを生む技が確実に求められている。

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