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エピソード環境市場新聞創刊時から連載する人気コラム。企業活性化教育研究所の長尾光雄所長が、企業研修時に経験した「自利利他」にまつわるエピソードを紹介します。

#45
自利利他 じりりた -3-

私たちは誰かの役に立つために存在する

 比叡山延暦寺で、極限の行といわれ、途中での断念は自害だという究極の掟があるという千日回峰行。楽して意識レベルは上がらない。何としても自分の意識レベルを上げるという強い思いがあるから千日回峰行に入るのだ。レベルが上がるのに見合うだけの苦しみを体験してこそ人間は成長する。
 この千日回峰行をなし終えた光永圓道師が、師匠から「大変なのは明日からだ」と言われたそうだ。今までは、自分自身を高めていく自利行だったが、これからは人様のために尽くす化他行(利他行)が始まるのだ。
 人生におけるあらゆる失敗の原因は自分のことしか考えないことにあると心理学の三大巨頭の一人、アルフレッド・アドラーは言っている。確かにそうだ。人間は誰しも自分に甘い。意識レベルを上げ、自分のためだけでなく、人のため、世の中のために役に立つことを考えるのは大事なことだ。相対性理論のアルバート・アインシュタインが、「なぜ私たちは生きているのか」という問いに「人の役に立つためです」と答えた話は有名だ。
 まさに、私たちは誰かの役に立つために存在している。企業の世界でも同じだ。お客様の支持がなければ、企業の存在理由はなくなる。お客様をだますと、いつか化けの皮が剥がれる。
 過去2度にわたって、組織的なリコール隠しが明るみに出て、消費者の反発で経営危機に陥った経験がある三菱自動車。それなのに、また、消費者の信頼を裏切る自動車の燃費データ改ざんの不正が発覚した。体質を変えない限り、同じ問題は起きるだろう。
 だが、トップが何としても体質を変える覚悟があれば、体質は変えられる。判断に迷ったときは、より大きな集団の利益を優先すればいい。自分よりも会社、会社よりも消費者の利益を考える。その考えが企業人として大成する道でもある。
 自利利他だ。

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