人の遺伝子には「自分の得だけ」考える自我:利己の心と「自分よりまず他人のために役立つこと」を考える真我:利他の心がある。ともに人の生存には必要。だが利己の心での判断は、目先の損得判断なので間違う。誰の協力も得られない。一方、利他の心での判断は、他人のことを考える大局的で視野の広いもので皆の協力を得られる。
資本主義の社会においても自利利他の精神は必要不可欠だ。ケンタッキーフライドチキンの創設者カーネル・サンダースは「どれだけ顧客を満足させるか」を真っ先に考えた。彼は自ら各地の支店を訪れ、抜き打ちでフライドチキンの味をチェックし、安い素材を使い経費を浮かせる支店長を見つけると即座に解雇。結局のところ、お金は顧客の満足度に応じて入ってくる。安い素材で味が落ちると、顧客の満足度が下がり、客足は遠のく。入るはずのお金も入らない。どんな仕事にせよ顧客を喜ばせれば喜ばせるほど、お金は入ってくる。「お金がいくら入るか」よりも「どれだけ顧客を喜ばせるか」を第一に考えることだ。
遺伝子工学の世界的権威で筑波大学の村上和雄名誉教授は利他の心は遺伝子に刻まれた人間の本質といっている。誰しも人は恋人、家族、他人、世の中といった自分を取り巻く人のための力になりたいという利他的な本能、思考、行動がある。利他の心は人間の潜在意識の一番奥にあり、その前に利己の心があるという。ややもすると人は利己の心で判断。私も自分の未熟さをよく感じる。
利他の心をどう引き出すか大事なことだ。始めは小さなことでいい。道のゴミを拾う、玄関の靴を揃える、身体の不自由な人に席を譲る……。会社は利他の心を引き出すのに最適な場だ。自分のしたことが他人の喜びにつながり、自分にもかえってくるという繰り返しが起こる場でもある。自分だけ利益を得ようとしてはいけない。他人にも利益を与えることだ。自利利他の精神だ。