ある企業の話だ。部門の業績悪化、社員の退職が相次ぎ部門立て直しのためチームリーダーが梶原さんから本田さんに変わった。本田さんは「営業所に入り愕然としました。5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)がまったく浸透していない。書類の散乱、倉庫内の商品の積み忘れ、破損、放置……。規律が緩み、怠惰と無責任がはびこるとはこのことかと実感しました」と嘆いた。そこで本田さんは、まず営業所内の規律強化から始めた。ユニホームの身だしなみ、営業所内の清掃、ゴミの処分方法の変更、車両の清掃など、当たり前のことを一つひとつ徹底させた。
前リーダーの梶原さんは、組織の基本を部下がおろそかにしても、「これくらい大丈夫だろう、問題ない」と放置して、何もしなかったというのだ。梶原さんは部下に迎合するのではなく、時には嫌われても注意や叱責をするべきだったのだ。
因果倶時、原因と結果は必ず一致するのだ。
私は研修で梶原さんに対し激しく叱責した。「問題は責任感のなさにある。小さな問題を放置すると、段々と大きな問題になるということがなぜわからないのだ。物事にはすべて原因があって結果がある。かつてこの部門は業績トップで、社員も育っていた。なのに、引き継いだあなたがリーダーとしてやるべきことをやらなかった。だから部下が意欲をなくし、部門の業績が悪化したのだ」。
実は本田さんがこの部門を業績トップの部門にしたのだ。2年前に梶原さんと交代。梶原さんが担当した2年間でトップの部門が駄目な部門になった。本田さんが言った言葉が忘れられない。「私が以前採用して育てた6名もやる気、意欲をまったく失っていました」。
人間は易きに流されやすい。〝因果倶時〟だ。
だからこそ人の上に立つリーダーは「原因と結果は必ず一致する」ことを肝に銘じ、時には部下に嫌われても、長期的な視点に立ち、部門経営をキチンとすべきなのだ。