「私はこの仕事をするだけの給料をもらっていません。だから給料分の仕事だけしています。当然だと思います。私が損しますから」──ある企業に中途入社した杉村さんという若手社員の研修の感想文の一部だ。
確かに資本主義経済では、労働に見合った対価といわれれば、それはそれで一つの説得材料にはなる。それに、人間の遺伝子には個体維持のために利己的な心が備わっている。杉村さんに限らず、口には出さなくとも給料分だけの仕事しかしたくない、またはしないという人も多いだろう。そのような人は、できるだけ楽な仕事、少しの仕事をすることで、 給料分以上の仕事をする人より得をしたと考えるのだ。だが、そう考えると結果はどうなるだろう?
杉村さんは、前職をリストラで解雇されたと感想文に書いていた。その一因には、杉村さんの仕事観も影響しているといえるだろう。
杉村さんが給料増加を考えるなら、給料分以上の仕事をすることだ。そうすれば、必ず企業人として高い評価を得られ、仕事の能力も高まる。その結果、今までより高い地位や多くの収入を得られるのは間違いない。因果倶時だ。
現代は顧客満足、顧客感動を追求する時代だ。得る前に与えることだ。
人間の遺伝子には、他人のために自分を犠牲にしようとする利他の心もある。その心に磨きをかけることだ。あなたの企業人としての評価は、多かれ少なかれ、他人が決めている。あなたを昇進させるのも他人、昇給させるのも他人。他人に認められるということは、あなたが願望をつかむ第一歩でもある。他人から認められるためには、利他の心が大きな力を発揮する。どれほど大きな力を発揮するかは、あなたも次のことを実験してみるとわかるだろう。
「今後6カ月の間は金銭報酬をまったく期待せず、受け取らず、毎日少なくとも誰か一人の役に立つことをする」
(ナポレオン・ヒル)