• 「日本の気候変動2020」を読み解く
  • 気象庁では『日本の気候変動』を毎年発行しています。地球の温暖化について最新の知見が盛り込まれた本書について解説していきます。

第13回 日本の高潮の発生数と大きさに長期的な変化は見られない。
しかし今後の高潮リスクは増加すると考えられる

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

 

高潮とは、台風や強い低気圧が来た際、海面水位そのものが上昇する現象を指します。台風や低気圧は通過するまで時間がかかるため、高潮も数時間程度続きます。そのため、低い土地などで浸水を引き起こし、時間とともに水害地域が拡大します。その高潮、いまのところ日本では発生数などに変化傾向が見られないそうです(以下“”部分は『日本の気候変動2020年版』からの引用です)。

・高潮災害は世界中で発生している。

・日本の高潮の発生数や大きさには、年ごとの変動があるものの、有意な長期変化傾向は認められない。

・高波の波高は、世界の広い海域で高まる傾向が見られる。

・日本沿岸では高波の波高が増加する傾向が見られ、その変化は特に太平洋側で大きい。

本書35P

ここに出て来る「高波」とは、波浪注意報・警報の対象になる程度の高い波のことです。高潮は潮位すなわち海面水位が高くなることを指すのに対し、高波は波そのものが高くなっている状態を指します。そして、その波の高さが波高です。本文内では、日本の場合、“高潮の発生数や大きさに有意な長期変化傾向は認められない”ものの“高波の波高が増加する傾向が見られ、その変化は特に太平洋側で大きい”ことが明らかにされています。

・大きな高潮は1960 年代に比較的多く発生し、その後は少なかったが、1990 年代から再び頻発するようになった。高潮の発生数や大きさには年ごとの変動が大きい一方、1950 年から現在までの期間において有意な長期変化傾向は見られない。
本書35P

観察結果によれば長期にわたる有意な変化は見られないようですが、高波の波高は高くなっていることがわかっています。

・日本沿岸では全国的に高波の波高の増加が観測されている。年最大波高には2.5~7.6cm/年の上昇があり、その変化は特に太平洋側で大きい。
・高波の波高の増加傾向が人為的な気候変動によるものか自然変動由来なのかは明らかではない。
本書36P

太平洋側では最大波高が上昇しているものの、地球温暖化の影響かどうかまではわかりません。断定するにはデータが不足しているということです。

ちなみに気象庁では海岸に設置したレーダー式波浪計観測システムから海面に電波を送り、その反射速度などを測定し、波の高さを測っています。こうした波浪計が全国の海岸6ヵ所に設置されています。

今後の高潮リスクは高まる
一方で将来を見通したとき、太平洋側では今後、高潮のリスクが高まることが予想されます。

●潮位偏差の将来予測によると、例えば大阪湾では、小規模な高潮の数は減少するものの、大規模な高潮の頻度が増加する。

●東京湾、大阪湾及び伊勢湾の最大潮位偏差の将来予測によると、21世紀末(2075~2099年)における各湾の最大潮位偏差は、現在気候(1979~2003年)と比べ増加する。台風の将来予測に依存することから、確信度は中程度である。

本書37P

これについては『日本の気候変動2020(詳細版)』に詳しい解説が載っています。

全球を対象とした検討と異なり、日本では計算範囲が狭くなるため、様々な手法による高潮の将来変化の予測が可能である。(中略)これまでの多くの研究結果は、三大湾(東京湾、伊勢湾、大阪湾)に集中しており、変化量の大小はあるものの、三大湾の高潮は将来気候で増加することが見込まれている(森ほか, 2020)。ただし、台風の将来予測に依存することから、確信度は中程度である。

『日本の気候変動2020(詳細版)』173~174P

本コーナーの第6回では日本の南海上で猛烈な台風の存在頻度が増すと予想されることをお伝えしてきました。

本記事によれば、「熱帯低気圧の再現性に関する問題は依然としてあり、さらなる予測モデルの改善が必要である」とのことです。そのため、将来の台風予測に関してはどうしても確信度が低くなってしまいます。

しかし、中程度の確信とは言え今後は高潮のリスクが高まることが予想されます。ご自身の居住エリアの災害リスク情報を把握し、日ごろから備えておきましょう。

<コラム> リスク把握に役立つ「ハザードマップポータルサイト」
国土交通省のハザードマップポータルサイトをご覧になったことはありますか。

こちらは高潮をはじめ、洪水、土砂災害、津波、道路防災情報、地形分類の合計6分野の情報が掲載されています。住所を入力すると、その土地の成り立ちや想定される災害リスクなどがわかりやすく表示されます。
また、本サイトには「わがまちハザードマップ」も載っています。こちらは市区町村を選ぶと、各自治体が公表している防災情報にアクセスいただけます。地球温暖化対策については、今後の温暖化を防ぐ予防策と、今後予想される温暖化への適応策の2つを合わせて考えることが重要です。日頃から災害のリスクを把握し、万一の事態に備えましょう。

 

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