• 「日本の気候変動2020」を読み解く
  • 気象庁では『日本の気候変動』を毎年発行しています。地球の温暖化について最新の知見が盛り込まれた本書について解説していきます。

第3回 日本国内の大雨および短時間強雨の発生頻度が増加している

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。


近年の日本列島は線状降水帯や豪雨・大雨による災害が多発しています。
そこで今回は本書の第4章に掲載されている温暖化と雨の関係を見ていきます。

本書によると、実は日本国内では大雨や短時間の強雨の頻度が増えているものの、雨の降る日数そのものは減少しており、年間降水量・季節降水量といったいわゆるトータルの雨量に変化は見られない、と説明しています。

これはどういうことなのでしょう。まずは大雨や短時間の強雨について見ていきましょう。

●気象庁の全国51の観測地点で観測された降水量のデータによれば、1901~2019年の期間、日降水量100mm以上及び200mm以上の大雨の日数は、いずれも増加している。統計期間の初めの30年間(1901~1930年)と最近の30年(1990~2019年)を比較すると、それぞれ、約1.4倍と約1.7倍に増えている。
●1 時間程度の短い時間スケールで局地的に発生する短時間強雨の発生頻度も増加している。気象庁の全国約1,300地点のアメダス観測地点で観測された降水量のデータによれば、1976年から2019年の期間、1時間降水量50mm以上及び80mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、いずれも増加している。統計期間の初めの10年間(1976~1985年)と最近の10年(2010~2019年)を比較すると、それぞれ、約1.4倍と約1.7倍に増えている。
本書13P


大雨の日数に関しては統計期間の初めの30年間(1901~1930年)と最近の30年(1990~2019年)の比較ですが、短時間強雨については統計期間の初めの10年間(1976~1985年)と最近の10年(2010~2019年)の比較です。両者の間には統計期間と比較期間に大きな違いがありますね。

この違いは観察データの違いに関係しています。

大雨については、継続的に観測が続いている全国51地点の降雨データが基になっています。降水量は早い段階から観測しているため、古いデータが残っているのです。
一方の短時間強雨は全国1,300ヵ所のアメダス観測地点のデータが用いられています。アメダスとは地域気象観測システムのこと。1974年に運用が開始され、気温・湿度・風速・風向・降水量など、気象予測に関するさまざまな基礎データの収集装置として威力を発揮しています。
このように日々技術が進歩することで、さまざまなデータが少しずつ積み重ねられてきた結果、気象現象の原因解明や予測精度が向上してきました。2つのデータの期間の違いにはそうした観測技術の進歩があったのです。


さて、以前に比べ大雨の日数が増え、短時間降雨の際の1回あたりの降水量も増えていることがわかりました。

一方で本書は、雨の降る日数そのものは減っていること、さらに年間および季節単位で比べると、降水量はあまり変化していないと説明しています。

これはどういうことなのでしょうか。

比較結果について、本書は次のように説明します。

●前述の気象庁の全国51観測地点における観測によれば、1901年から2019年の期間、雨の降る日(1日の降水量が1.0mm以上の日)の日数は減少している。減少率は100年当たり9.5日である。
●また、同じ観測地点で観測された降水量のデータを用いて計算した年降水量、季節降水量には、統計的に有意な長期変化傾向は見られない。地方ごとに平均した年降水量にも、有意な長期変化傾向は見られない。
本書14P

上記から、日本の降雨量は次のように変化してきたといえます。
「大雨の日数は増えており、短時間強雨の年間発生数も増えている。しかし、1年を通じて、または季節を通じて日本の降水量を比較した場合、あまり変化していない。そして、雨が降る日数そのものは減っている」
つまり「日本の雨は、通年で見ると降る量に変化はなく、雨が降る日そのものは減っているが、降るときは一気に大量に降るようになった」のです。

本連載の第1回で見てきたように、日本では温暖化が進み、平均気温が上昇しています。気温が上昇しているということは、晴れの日数が以前より多いことでもあります。雨の日が少なくなっていることは気温データからも裏付けられそうです。

ちなみに本書では以下のように説明しています。

雨は、大気中の水蒸気が雲の中で凝結し、それが地上に落ちてくる現象である。空気には、気温が高くなるほど水蒸気を多く含むことができるという性質がある。気温が高くなることで、雨として降るまでに水蒸気が大気中にため込まれる時間が長くなるために降水の回数が減り、その一方、一度の大雨がもたらす降水量は一般的に多くなる。気象庁の高層気象観測(国内13 地点 本文内注:稚内・札幌・秋田・和島・館野・八丈島・潮岬・福岡・鹿児島・名瀬・石垣島・南大東および父島)によるデータからも、上空約1,500mの空気中に含まれる水蒸気量は増加傾向にあることが確認されている。これまでに観測されている大雨の頻度の増加や強度の増大は、気温が上がるほど空気中に含むことのできる水蒸気の量も増えるという性質を反映した、地球温暖化に伴う気候の変化の一つと考えられる。
本書14P

近年日本各地で大雨による被害が増加していることと温暖化は強い相関関係があると言えるでしょう。

ちなみに本書では次の第5章で“今後も雨の降り方が極端になる傾向が続くと予想される”としており、これからは大雨対策がさらに重要になると思われます。
皆さんもご自身の住む地域にはどんなリスクがあるのか、国土交通省のハザードマップポータルサイトやお住まいの地域の自治体のホームページなどを確認して、万一の事態に備えましょう。

第4回は冬の積雪・降雪について見ていきます。

関連リンク:
気象庁『日本の気候変動2020』https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/
気象庁『気候変動監視レポート』https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/

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